年末

鈴龍

年末

12月下旬

 高卒から入社した会社ではもう5年目の冬を過ごした、実家から離れた場所にある会社なので今では一人暮らしをしている。平日は仕事で作業に追われているが会社での今年の業務は終わり、実家へ帰省している。


 実家があるのは古き良い田舎とはまた違いただの田舎という感じで山があり海が近くあるという土地だった。


小学生のときなんかは自転車で一時間ほどしてコンビニがあるという田舎であったが、しかしいまではリゾート地として注目されている。夏になると海で若者がBBQや海水浴でにぎわっている、冬では牡蠣目当てで県外から食べにくる人たちも多くいる。


だがそれはこの地域のなかでは都会よりの地域の話である。僕の家のある地域を見渡すかぎり山がありだだ広い畑にはがあるというものである(あとお寺がいくつかある)。

 まあそれでも子供のとき住んでいた故郷だから帰省したときはなんだか安心しできるて良いと僕は思っている。


お昼の一時頃

そんな年末休暇に実家に帰省した僕ではあるがやることといえば、ただコタツに入りながらテレビを見るだけだ。


テレビタレントが食事をする番組であった、一般で提供されるものよりかなり多い量で炊飯器で炊いた米をそのままひっくり返したというほどの特大カツカレーを食べるというものだった。

タレントはそれをバクバクと休む暇もなく食べている。

「いや、これのどこが楽しんだよ」

あまりのつまらなさについ僕は誰もいない部屋でぼやいた。

いや確かに最近のテレビ業界も厳しみたいな話しは聞くが流石に最近のテレビはつまらなさすぎる。

別に自分自信テレビが嫌いなどという話しではない、しかし明らかに一部の視聴者を狙ったものばかりで退屈すぎる。

「このままではどんどんテレビ離れが加速するじゃないか」

とどの立場からの言葉かよと自分でも思いながらぐちぐちとしていた。


まあ確かに年末とあり特番が多く目立つ時期でもある。

今年はドラマは結構みたほうだなと思い

「しかし大河ドラマは良かったよな~」

人生で初めて始めから最後まで見た大河だったのでは、あるが主人公の成長や時代の変化をみて最終回にはなんともいえないような消失感に襲われる作品であった。


時は戦国 

お家のつかえている大名の家が滅亡の道を辿っていた。主人公は父と兄そして頼れる家臣や仲間と力を合わせともに激動の戦国時代を生きていくというものであった。史実をしっていたのではあるが、毎回ドラマもみるたびにこのままいけば何かが変わるのではないかと期待をさせてもらえた、ドラマであった。

「あれほどの作品にはなかなか出会えないよな~」

としみじみしていた。


そんな風にだらだらとしていたら

「あんたなんもすることがないならいい天気だし散歩でもしてきたらどうね」

ととなりの部屋から来た母から邪魔臭そうに言われた。

「ええ~動くのだるいし寒いし嫌だし」

あんたね~なら代わりに掃除でもしてくれてもいいけどと言われ僕はしぶしぶ

外出する服装に着替え散歩をすることにした。


外へ出ると確かに太陽がサンサンと輝いていて暖かいが時折吹いてくる風が冷凍室で扇風機の風が吹いているのかというぐらいに寒い寒すぎる。

寒さと温かさが混じるなかひたすら目的なく歩いていると大きな柿の木が目に入った。

柿の木を見ながら子供のころを思い出す。


僕の家は母子家庭で幼いころ母は病気を患っていて病院に入院していた。

母とかわりにおじいちゃんが僕の世話をしていてくれた。(おばあちゃんは僕が生まれるずっと前に亡くなったらしい)

おじいちゃんは山の近くに畑を持っていてよく耕運機に乗せてもらって畑までいっていた。その畑までの道にその柿の木はあった。実はこの柿の木はおじいちゃんが今でいう中学校の卒業記念に貰った、柿の苗から育てたものだ。(この土地もおじいちゃんの畑のひとつだったらしい)

毎回やまにある畑まで行く途中にここで柿をちぎってもらいよく食べていた。

柿は甘くて近くに駄菓子屋なんてない僕にとっては大好きなおやつと思いながら食べていた。


あれから何年もたつのに柿の木はしっかりと生きていた、すこし柿の木を見たが時期が時期なのもあり一つも実はなかった。葉っぱひとつないはげた柿の木に懐かしさを覚えながら、そうだおじいちゃんの畑に行こうと思いまた歩き出した。


そこから20~30分ほどあるいたところに草木が生い茂った畑があった。


ああここも懐かしいなとながら僕は畑からすこし上にあるなにもいない小屋を見ていた。この小屋には昔なぜかクジャクがいてよくクジャクを見ていた記憶がある。

そしてそれよりもう少し上には大きな建物があってそこで牛が何頭もいてその前によく吠える犬がいた。その犬に幼いころ恐怖させられた僕は犬恐怖症になったんだっけ。

だけど今ではもうその大きな建物には牛も犬もいないただ寒い風と鳥の鳴き声がするだけだった。

僕は周りを少し歩いて

「そろそろ帰るか」

とつぶやき家へ帰ることにした。


帰り道僕は少し考え事をしていた。

何年も前のことなのに昔の記憶はなぜかはっきりとしていたな

母の代わりにおじいちゃんは僕に良くしていてくれた

ドライブ代わりに耕運機に乗せてくれたし、おじいちゃんの似顔絵を描いたときはとても喜んで褒めてくれた。

よくわがままも聞いてくれたし今思うとほんと迷惑かけたな


ある時母が病気が治り家に帰ってきたその時期あたりはなぜか記憶があいまいだ

母がかえってきてから少ししておじいちゃんを見かけることがなくなった。

母が家に帰ってきてから僕は毎日夜までひとりで家にいた。

外に出ることもなく、ひとりでいた。


ある時夢を見た

母とおじいちゃんがいた母は料理をしていた。おじいちゃんは僕と一緒にまあいつも通り山にある畑に行くというなんでもない夢だった。


目が覚めるとなんだか家が騒がしかった。

起きてみるとなぜか遠くに住んでいる叔母がいた。

叔母はただ一言

おじいちゃんが亡くなったと僕に言った。

幼いころの自分とはいえ人が亡くなるということは理解できた。

僕は始めて身近にいる人の死を知った。

たしかその時は涙が止まらなかったと思う。


おじいちゃんの葬式が終わった。


そらから女一人で僕を育ってていった。

中高の時なんか喧嘩しない日が無いというくらいに毎日衝突していた

あーだこうだと言い合いばかりいま思えばくだらないことで喧嘩をしていたなと思う。


ほんと僕は迷惑しかかけてないなと

そんな風に考えていたら、いつの間に家に到着していた。

「ただいま~」

とひとこと言って僕はおじいちゃんのいる仏壇に行って目を閉じながら手を合わせた


さみーさみーと言いながらコタツのある部屋に行きコタツの中に潜った。

「あんたなんでさっき仏壇に手合わせとったとね?」

と母が聞いてきた。

「道の近くにある柿の木みたらおじいちゃん思い出したからなんとなく」

見られていたのかと思い少し恥ずかしさを隠しなが答えた。

そっかと母をは言って

「じいちゃんはあんたがちゃんと立派になってよろこんどうよ」

と言いながら掃除を再開した。


僕がいまこうして仕事をして帰省しているのは母とおじいちゃんがいたからだよなと思いながら

僕は暖かいコタツから出て母と一緒に家の掃除をした。

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年末 鈴龍 @suzu1925

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