おやすみ勇者 

「そのドワーフの赤ちゃんが、この俺だと。そういうことだよな」

 ヨカナンは起き上がり、鏡に自分の姿をうつす。

「なあ、俺ってドワーフにしては…背が高い方なのか?」

 鍛え上げられた体に似合わず、肌の色は真っ白で、髪の色は真っ黒だ。俺はいったい何歳なのだろう。


「ふ、ふふふ…」


 その姿をみていたシエラが不意に笑いを漏らしてしまった。

「おい、なぜ笑う。さてはおまえ騙したな!こちとら真面目に聞いてるのによ!」

「ひひ、ひひひ、面白い… 頭わっ… ふふふ…」


「お前まじか」

 ヨカナンの目つきに緊張がはしる。深読みかも知れんが、目の前のこの女は本当に自分の女なのか。自分は何も知らない、面倒を避けるためにシエラとしか会話したことがない。シエラが語るヨカナンの身の上話は丸ごと嘘の可能性すらあるのだ。

「あっ、勘違いしないで。ヨカナン、今深読みしてたよね」

「なぜわかる?!」

 心に浮かべていた単語がリアルに出てきたので、ヨカナンは一瞬驚いてしまった。さては妖術師か。

「目に出てたよ。

安心して。私は正真正銘あなたの婚約者、シェラザードです」

 柔らかく潤んだ切れ長の瞳が見つめてくる。

 ヨカナンは起ちそうになったのが気恥ずかしく、さりげなく股間を押さえながらベッドに座り、そして話題を変えようとした。


「まあいい。童話染みてる話すぎて真面目に聞いてられん」

「あなたのお話なのに。あなたが聞かせてくれたお話なのよ」

「俺が語ったのか?こんな童話みたいな話を?俺王子なの?」

「まあいいじゃない。

続きが楽しみなら、さあ、ベッドに寝転んで、ちゃんと枕をしきなさい。

…いい子ね。

あら、気に障った?

ごめんなさい、そのまま聞いてて。

それじゃあ、、ドワーフの国カザドスタンの長アッサームの息子になったヨカナンは…」

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おやすみ勇者 花井ユーキ @kimugn

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