亡論風撫

めるしー。

第1話 コンプレックス

冬の凍えるばかりの寒さから家の暖かさに身を任せ、生意気にも人にのうのうと御高説垂れようとしている自分がある。

今更、なぜ書いたのかと思う。

でも、なぜ書かないのかとも思う。

そして思い出した。


僕の家から、家の下の線路は見えない。全部カーテン。

水色のカーテンしか見えない。家の下で暴れている酔っ払いも、ガキも、ただ音が聞こえるだけ。存在していない。

見たくないもの。

誰も見たくないもの。

他人の姿も。自分の姿も。


暗い部屋の中で、陰鬱に考える。陽はまた登るのでしょうか。

明日冷たくなっていることもあるだろう。

かつて見えた山はもうここから見えないのだから。

鉄に囲まれて、檻の中で餌に食らいついていた哀れなペットが部屋に帰ってくる。

お前は醜い、お前は醜い。

ひたすら心の内で自責する。いつもそう。年の終わりは悲しくなる。

無機質な映像。軽薄な微笑み。赤い涙。

テレビは僕にいつでも教えてくれる。

自分の姿を。


どこで叫んでも、どこで泣いても、いつも一人。


隙間風がビューン、ビューン、と音を立てる。目覚ましがビリビリとなる。そして鉄道の音が横で聞こえる。

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