ストーカー少女

雨音

憧れる人

後ろから、足音が聞こえる。

それは、確実に徐々に近づいていた。

ある学校の帰り道、私は文化祭の用意で帰りがいつもより遅くなり帰る頃には、辺りはうっすらと暗くなりかけていた。

始めは、全然気にならなかったのだが家に近づくにつれ次第にそれは、近づいていた。

歩みを止めず、歩き続けていると私の学校の先輩が住んでいる家が見えてきた。

私の通っている女子高のその先輩は、学校の中で一番美人と言われている人だ。

その姿は見て驚くほどに整った美しい顔立ちに白くきめ細かやかな肌にモデルかと思うほどにスラッとした細身の身体、気取らずその容姿に合った性格に頭も良くまるで別の世界から飛び出してきたようなそんな夢みたいな文武両道才色兼備を備えた人なのだ。

私と先輩の家は、近くよく朝一緒になることがあるその度に会釈をすると先輩は、笑顔で手を降ってくれたりたまに挨拶までしてくれるとてもいい人だ。

『先輩…まだ学校に居るのかなぁ?』

その家には、明かりが付いておらず人がいる気配が全くなかった。

私は、なんとなく家を眺めがらその場を後にする。

そうすると、あんなに近づいていたはずの足音が徐々に遠ざかりやがて聞こえなくなった。

自分の家の玄関前で恐る恐る来た道を振り返るとそのには、誰もいなかった。

きっと気のせいだと思いそのまま家に入る。

家には、 誰一人と居ない様子であった。

まだ皆出掛けているのであろう。

ふと玄関の靴箱の上に置き手紙がありそれを見ると今日両親は、帰りが遅くなるという連絡の紙であった。

良くあることだが珍しく手紙があるのにちょっと驚いた真っ先に自分の部屋に籠る。

見慣れているはずの自分部屋なのになぜか何処か違う雰囲気であった。

だがし何処がどう変わったかと聞かれると自分でもよく分からない。

なんというか妙な違和感しかないのだ。

その違和感がなんなのか辺りを見渡しているとなんとなく自分のベッドの上にある枕元の隣に置いてある首に赤いリボンをくくりつけられた熊のぬいぐるみに目がいった。

その熊のぬいぐるみの手には、何か白い手紙が見え思わず口を手で塞ぎ背中に嫌な汗が流れる、そうその違和感の正体は、このぬいぐるみが持っている手紙であったのだ。

確かに最近変なことばかり起きて自分がもしかしたらストーカーに追われているのではないかと思っていたが今までこんなことは、なかった。これは確実に今私いる部屋の中にあり、今目の前のぬいぐるみが持っている。

『……な、なんで、クマさんが…』

私は、震える手を伸ばし熊の持っている手紙を手に取り手紙の封を開け中身を取りだした。

その内容は…………



こんにちは


きょうはとてもいいてんきですね


さいきんおかおのいろがおわるようですが


たいちょうにはきをつけてくださいね


きょうもあなたのすがたをみかけました


やはりあなたのえがおはすてきですね


まいにちみていたいほどにとてもとてもあいらしいです


でも


ずいぶんとあるだんせいとたのしそうにおは

なししていましたね


たしかあなたのがっこうはきょうがくではな


くじょしこうというおんなのこしかいないがっこうでしたよね


きょうしというわけでもなさそうですね


あのだんせいはいったいだれなのですか


わたしのしらないところでいったいなにをし

ているのですかわたしはあなたのことがすきです


なのにあなたはわたしのことばにみみもかさ



ずにいつまでもへんじをかえさずむしばかり


することにわたしはおこらず


まいにちまちつづけているのにどうしてです

わたしのことはむしするのにどうしてどこ


のうまのほねともしらないだんせいとははなしているのになんでわたしのことばをむしするのですかなぜだんせいとおはなししているのですか


あなたがいつまでもこうだから


きっとじぶんからおはなしするのがにがてなのかとおもいました


ですから……



一つも漢字に直されていないふざけた文章のなかで私は、最後の言葉を読み上げる前に手紙を床に落とした。

だってその最後の言葉には…………

『この家に居る……ってこと…?……』


わたしきょうあなたのいえにでむくとこにしました


いっぱいいっぱいおはなししましょうね


その時、

下から、玄関の扉が開く音が微かに聞こえた。

両親は、今日いない。

家には、今私一人……


ってことは……


怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い恐い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

私なにもしてないのに

高校に入ってから男の人と一回も話してないのにどうして!?

というか私は男の人と喋るの苦手なのにましては男の知り合いなどほとんど居ないに等しいのに。

誰かと勘違いしているの?

だとしたら、誰と勘違いしているの?


やだ

絶対にいやだ。

会いたくない!

絶対!絶対やだ!!


私は、机の引き出しからハサミを取りだし自分の部屋を出て廊下をゆっくりと音を立てないよう細心の注意をはらって進んでいく。

『会ったらすぐさま警察に突きだしてやる』

リビングへ向かおうとするとそこから誰かの声がした。

「おーい誰かー誰もいないのー?」

明るく何処か楽しげに聞こえる声に恐怖を感じを味わいながら電気のついていない暗いリビングへ向かい私は、ハサミを強く握り直し前に構えて進む。

下を向いている余裕なんてなく、私は前ばかり気にしていた。

そのせいか床が濡れていることに気づかず靴下がやっと全体的に濡れてから気づいた。

それは、微妙に暖かいような冷たいようなとろみがかっている液体だった。

下を向くと、電気が付いていなかったため一瞬ではわからなかった、だが片足を少し上に浮かせるとべっとりと糸を引いていた。

恐怖で足を掬われその場で座り込む。立ち上がろうともうまく足に力が入らないのだ。

手に握っていたハサミを落とす。

微かに膝に冷たい風が伝わりそれを辿るように見ると視界に冷蔵庫が入る良く見ると冷蔵庫の扉が半開きになりそこからこの液体が流れていた。

冷蔵庫の中の光で液体が照らされ良く見るとそれは

赤黒く冷蔵庫の中には、何やら大きな物が入ってるように見えたきっとそれで扉が閉まらないのであろう。

私は、一歩一歩冷蔵庫に近づきその中身を見ると そこには、変わり果てた黒い固まりとかした人の姿であった。

叫ぶどころか恐怖を通り越して声が出なかった。

自分が踏んだ液体と冷蔵庫に入ってる死体に何がどうなっているのかそれに思考が追い付かないのだ。

指の部分の薬指に光る銀色指をつけていた。

液体のせいかくすんだ色に変色していたが

間違いないこれは、両親だ……

それは見たことのある両親の結婚指輪あったつまりこの冷蔵庫に入っている死体は両親たちなのだということに気がついた。

私は、震える身体を無理矢理動かし、落としたハサミを手に取り立ち上がり再び歩き始めた。

リビングには、そのストーカーらしき者の姿はなく

私は、そこを後にした。

自然に目から涙が出る。

変わり果てた両親の姿、得たいの知れない人物への恐怖で、もうなんなのか意味がわからない。

私は、急いでトイレに駆け込み制服のスカートのポケットから携帯を取りだし警察に電話した警察に帰ってきてから何があったのか死体のこと全てを話した。その時、何処からか誰かの叫び声が聞こえそれに驚き話のと中で携帯を落としてしまい携帯は、トイレの便器の中へまっ逆さまに落ち水の中へ入ってしまう。

慌てて取り出そうとしたが、その時壁を殴る音が響き私は、思わずその場から携帯を置いて逃げ出す。

もしあのままいたとして気づかれたら……そんなことが脳裏に過り思考よりも先に体が勝手に動いていた。

絶対、絶対許さない!!

私は、玄関の靴箱まで走って向かった

あそこなら、外へ出て助けも呼べるし何より家の電話が置いてあるからだ。

もう一度警察に電話し来てもらうのだ。

靴箱の上にハサミを置き血まみれの手で震える手を押さえつけながら、手に取り番号をいれようとした瞬間、肩に人の手がのった感覚があった。

私は、置いてあったハサミを手に取り振り返るとそこには、まっすぐに美しい長い黒髪を靡かせなにかを言いかけながら後ろに倒れる女性の姿があった。

「やっとあえましたね」

女性の胸には、私が持っていたハサミが突き刺さり口から血を流していた。

それは、見覚えのある同じ制服を身にまとった先輩の姿であった。

『……えっ……な、なんで先輩が!?』

私は、怖くなって玄関の外に出ると、ちょうど警察にの人たちに出合った。

『貴女が神崎さんですか?』

私は、その言葉に返事をし慌てて、今の状況の説明をしている途中警察の一人が私の手首に手錠をかける。

『……はぁ?……なんで私にかけてるんですか?』

そうすると警察は、私を見て

自分が何をしたかわかっていないのかと訪ねられた。

私が何をしたっていうのだ?

家に帰ったら、変な手紙に、両親が殺されているのだ。

それになぜか先輩の姿まで……

『……わけわかんない!!

私なにもしてない!!まだまだこの家にストーカーがいるかもしれないの!!

ふざけてないで、家のなかのストーカーを捕まえてよ!!』

『……もう一度聞きます。

貴女は、神崎さんですよね?』

『だからそうだっていってるでしょ!?』

そう言うと警察は、家の表札の書かれたところを指差しここは、貴女の家ですか?と訪ねられた。

そうして、警察の一人が私の顔を見て喋りだす。

『貴女がいいかけた住所をたどって来たのですが ここは『神崎』さんのお宅ではなく、『柊』さんのお宅ですよ。』

なんで、なんで、先輩の名字が?

だってここは、私の家で……

『はぁ、ストーカーの件があったけどまさか女だったのかぁー』

後ろの警察がため息をつきそのボヤきを聞き私はまた後ろを振り向いた。

『わ、わたしがストーカー?

い、いいいい加減な事をいわないでよ!?

だってだって

私は、ずっとストーカーに追われてて……』

その時、目の前には、何かが違う光景が広がってた。

私は、その時改めて先輩の死体をみて自分が何をしたのか気づいた。

後ろから追ってくる足音玄関の前で消えたあの音。


あれは、私を追うストーカーでなく私が追っていた私自身の足音だと。

そして、玄関の前で消えた音は、自分が先輩の家に着いて止まったからだ。

両親が珍しく置き手紙を置いていたのは、私宛ではなく先輩であったのだ。

部屋に行ったのだって違和感があったのだって 私自身が毎日毎日家に行きそれを催していたからだ。

あの熊……が持っていた手紙っ……

あれも自分が書いていたのだと思うと……

自分は、一体何をしていたのだ?……

足元がふらつき地面に膝をつく。

私は、この家に来てからまず、家から出てきた先輩の両親を殺し、それから近くにあった冷蔵庫に死体をつめ……指輪だってそりゃ家が近くなのだから両親ぐらい見たことがある、そして先輩の部屋に行って……行ってそれから 一人でストーカーに追われてるって錯覚していたのか……

ストーカーに追われていたのは、自分ではなく私自身がストーカーだったのか……

あ、だからこんなに私は、血まみれになっていたのか。

『まっ、

詳しい話は、あとで聞きますからね。』



私は、先輩の死体を見て

なぜか口元が笑っていた。




~END~

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ストーカー少女 雨音 @ameyuki15

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