オム カパーブル

雨樹月

episode1

『おめでとうございます。あなたは見事、プリンセスの従者として選ばれました』

突如、スマホの画面に現れた文。そして、画面がパッと暗くなる。

「えっ…?どうしたの、これ?……う、うそ⁉︎……この前勝手な貰ったばっかなのに…どうしよう」

画面が暗くなったスマホを縦や横に振ったり、ホームボタンを何度も押したがスマホは直りそうにない。ホームボタンを押しながら松裏永亜まつうら とあはため息をつく。

永亜は今年の4月に高校生になり、その入学祝いに祖母から貰ったスマホをとても大事にしていた。白地にピンクと水色で彩られたスマホは永亜のお気に入りで、スマホカバーを付けないで使っている。

高校生になり初めての夏休みで沢山の予定や連絡先が入っているから困る。それに、まだ買って貰ってから4ヶ月しか経っていない。

しばらく、頭を抱え永亜が固まっていると、不意にスマホがパッと光りホーム画面に戻った。驚いた永亜だったが、スマホに入っていた連絡先やアプリの確認をしているうちに、驚きは落ち着いていった。どこも、おかしな所は無かったのだ。

「永亜ー、お風呂、入りなさい」

「うん、わかったー。今行くね」

一階から聞こえてきた母の声に返事をする。元気に聞こえたのは、スマホが直った安心感があるからだろう。スマホを机に置くと、永亜は一階へ階段を降りて行った。

電気を消し、暗くなった部屋で、スマホが静かに淡い光を放っている事に永亜は気付いていなかった。

変なメッセージの事も、忘れていた。




「ふぅー。気持ち良かったぁ」

永亜はココアを片手に部屋に戻る。髪がまだ生乾きだ。永亜はタオルドライ派だった。机の上からスマホを取るとベッドに勢いよくダイブした。

スマホを大事そうに手に持ち、先程まで遊んでいたゲームを再開する。

そしてまた、しばらく遊んでいた時だった。突然、部屋に淡い光が満ちる。永亜は慌てて、スマホをいじるも、スマホが元に戻ることは無かった。かわりに、スマホからは優雅なクラシックのような音楽が流れ出した。永亜は何もしていない。

ピカッ‼︎

さらに強い光をスマホが発した。あまりの眩しさに、永亜は目を瞑る。

次の瞬間。

それは、あっという間の出来事だった。体がふわりと浮いたような感覚。次にジェットコースターに乗ったような、体中の臓器が上に押し上げられるような感覚。それらが次々に体中を駆け回る。【気持ち悪い】このひと言で済ませられないくらい、気持ち悪い。

「う……ォエ」

思わず吐き気がこみ上げる。それを無理に押さえつけ、辺りを確認しようと目を開けた。だが、霞む視界の中で、辺りに何があるのか見ることは困難だ。かすかに聴こえてくる優雅な音楽が、大きくなったり小さくなったりして頭が ガンガンと痛む。

激しい吐き気と頭の痛さに永亜は気を失いそうだ。

コツ…コツ…と遠くの方から誰かが歩いてくる音が聞こえた。その誰かは永亜の目の前で立ち止まった。

「いらっしゃい。私のお城へ」

そんな声が聞こえたような気がした。

永亜は気を失った。

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