1.4
健太郎(28)は一人で生活をする、東京都内のアパートへ戻るため、新幹線に乗っていた。「それにしても人多いなあ。」実家のある大阪から東京へ向かうこの新幹線に、同じ日の、同じ時間に、自分と全く同じ行動を取っている人がこんなにも沢山いる事に、ただただビックリしていた。
乗り物があまり得意でない健太郎は、新幹線ではいつもは眠っていたが、何故か今日は眠れないでいる。「本でも読もうかな。」そうして昨日買ったばかりの太宰治に手を伸ばしていると、通路を挟んで斜め前に座っている若い女性二人組の会話が聞こえてきた。
「私、アウターを買うの好きなんだけど〜、着れずになってるのいっぱいあるんだよね〜」健太郎と同じくらいの年齢だろうか。二人で関西方面へ旅行に行っていたらしい。某テーマパークのショップ袋や、京都で買ったであろうお土産が、ラックに乗り切らず足元にも置かれている。
「分かる〜TPOが合わないんだよね〜」TPOに合わせて服を選ぶ事の出来る彼女達に感嘆し、実家からアパートへ戻るだけながら新幹線という公共の個室でジャージ姿の自分を眺めてみる。
「そうそう〜この服とか、結局二年も着れなかったもん。今日が初めて〜」二年間TPOが合わずに着れていなかった服を着ている今日という日は、彼女にとって一体どのようなTPOなのだろう。健太郎は疑問に思い、どうせ暇なのだから。と考える事にした。
デート用に買ったのか。と、妄想が膨らむ。彼女は2年前、当時付き合っていた恋人とデート用に服を購入したが、一度も着ること無く別れてしまった。いや、そうなるとどうして今日着ているのだ。レズか。同棲のパートナーと婚姻が認められている地域もある世の中だ。よく見てみれば、片方はショートヘアーで左半分の髪を刈り上げている。レズに見えなくもない。
そういう目で見ていると、さっきから二人の距離がとても近い様に思えてきた。時々手が絡み合っている様な気もするし、お互いの太ももを触っている様にも見える。すると、左半分の髪を刈り上げた、アシンメトリーの女性が急にブラジャー一枚になり、もう一人の女性に覆いかぶさった。上に乗られた方は、アシンメトリーのお尻を触り始め、アシンメトリーは腰をクネクネ動かしている。二人はキスをし始め、お互いの服を脱がし、遂に二人はパンツのみ穿いた状態にまでなっていた。健太郎はずっと彼女達を見つめていたことに気付き、恥ずかしくなって目を逸らした。
そこで初めて気付いたのだが、数分前に止まった名古屋駅で健太郎とレズの女性を除き、全員降りたらしい。つまり、ほぼ全裸の女性二人と、健太郎の三人だけがこの車両にいるのだ。その事に気付いているのは恐らく健太郎だけで、女性二人組は完全に自分たちの世界に入っている。次の新横浜駅までは一時間以上ある。健太郎は気づかれないようにそっと席を立ち、ズボンを下ろした。その時、それまで健太郎の体を強く引き締めていたベルトのバックルが激しく床を打ち、まるで、試験の終わりを告げるチャイムの様な、高い金属音が車両内に鳴り響いた。さっきまで夢中になっていた二人がその音に気付き、健太郎の方を見た。「すいません!」と言おうとしたが、すぐにその声を喉の奥に戻した。なぜなら、二人が笑顔で近づいて来ていたのだ。あっという間に二人は健太郎の服を脱がせ、体全身を舐め始めた。最近ご無沙汰の健太郎の体はすぐに反応し、ビクンビクンと痙攣している。誰も言葉を発さないまま、遂には健太郎は通路に押し倒され馬乗りにされた。流石に、「こんな場所では」と本能よりも理性が勝った健太郎は女性を押しのけ、立ち上がった。それでもへこたれることなく女性は今度は二人がかりで健太郎を通路の床に張り付け、体中を舐め回す。既に健太郎の理性はここにあらずといったようで、されるがままに、仰向けに寝そべっていた。久しぶりの感覚に健太郎は我を忘れ狂う。女性二人はとことん健太郎を責め続けた。体中で女性の粘液を感じ取った健太郎は、おやつを目の前に出された子犬の様に、我慢出来ず、欲望に負け、解き放った。
「本日は東海道新幹線をご利用頂きまして、誠に有難う御座います。間もなく東京。」年明け早々顔に疲労を浮かべている人々が、一斉に立ち上がり、扉が開くのを待っている。口から垂れたヨダレを拭き取り、姿勢を直した健太郎は、パンツの中で生暖かい液体が溢れているのを感じた。
日常 じいざすエンドー @jiizasuendo
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