断章、一
水の滴る音がする。
厚く苔を
彼の足はくるぶしまでつめたい泥濘に浸かっている。
抱えた服の包みから、
布の包みは、井戸の底に投げ捨てられた。
それはあっけなく落ちていって、浅い水底に着地したのだった。ものの潰れる音に彼はとっさに耳をふさいだが、やがて井戸から身を乗り出し、暗やみの底をながめた。
頭上には暗雲があった。
しばらくして、ざんざん降りの雨が通りすぎていった。
雨は彼の髪、その薄い肩や背中をしたたかに叩いた。彼はしとどに濡れ、孤児のように立ち尽くしながら、長いあいだ、青い闇の底をみつめていた。
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