多彩な人物が登場するペルシャを感じられる宮廷が舞台のストーリーです。これだけの多くのキャラを書き分け、なおかつキャラの魅力を出せる、体温を感じられるキャラを描けることはすごいことだと思います。作者氏の実力の高さを感じます。陽の当たらない場所から、あることをきっかけとして宮廷に入った心の清らかな女装少年(守ってあげたくなるかわいさ!)と心がかなり荒れつつあった男装女王、ふたりがこれからどのように心を通いあわせていくのか楽しみです。そして、ナジュムがどういう役割を演じていくのか――これもまた楽しみです。
2月11日読了加筆
ラストまで読み終わりました。中盤から後半にかけて苛烈なストーリーに読み進めるのが辛くなることもありましたが、最後はふたりに穏やかで幸福な日常が訪れてくれて、本当にホッとしたというか、心が温かくなりました。まさに、春が訪れたといったラストでした。そして、ナジュムはやっぱりいいキャラでした。面白いだけじゃなくて、やるときはやる。人間味溢れる理想の男性だと思います。
アラビア風の煌びやかな美しさの裏に隠された、権謀術数溢れる世界を見事に描き切っている作品だと思います。
その魅力にすっかり取りつかれてしまい、続きが気になってしまって仕方ありませんでした。
日の当たらない場所で自分の異質さに怯え、必死で生きる少年。
自分の性別を偽ってまで、国のしきたりに縛られる女王。
そんな二人を中心に、物語中には様々な立ち位置のキャラクターたちが出てきます。
皆それぞれに魅力的で、信念を持って動いている人たちです。
誰が悪いとか、いいとかじゃなくて、己の実力と信念を信じて動いた結果なのだ、と結末を見て感じました。
何より、男装女王様がとってもかっこいい!!本気になったときの男らしさ№1です。
彼女の容赦ないかっこよさに何度も胸がときめきました。
それに女装美少年がすっごく可愛い!!ザ・守ってあげたい系!!
ほんとうに、女装美少年の純粋な可愛さに癒されます。癒し系美少年。
小動物みたいで、すっっっごく可愛いです。
緻密に編み上げられたストーリーと、魅力的なキャラクターたち。
ぜひ色んな人にお勧めしたいな、と思ったお話でした。
素敵な物語をありがとうございました!
蒼と白が混じりあう。衣服、匂い、揺れる金銀の装飾、油灯の影を追いかけずにはいられない。瞼を閉じれば色とりどりの灯篭が無限に広がるような。
毎日読まずにはいられない。それほど、この作品の虜になってた。
印象に残る場面を、ひとつ上げるとするならばハヴァース元王太子の処刑が実行される一幕。
息をのみ夢中で文字を追いかけた。ついにシャムシャは、自身を覆っていた天蓋を燃え落としたのだ。自分の心を焼き払うに等しい行為だったと思う。けれど、シャムシャの愛の烈しさが如何ほどか読者に響き渡る情景だった。
兄妹が、最期に瞳を交わす。
そしてハヴァースは、愛を告げた。呪いと言う名の、嘘偽りのない愛を。この愛は、シャムシャの命の灯が消える瞬間まで、息づくだろう。
全編通して一番考えたのは「夢のかたち」についてである。ラストシーズン、ライルを軸に様々な夢が交差する。皆一様に「いつかライルは草原に帰るのだ」と夢見て疑わない。
果たしてライルにとって、草原に羽ばたくのは、叶えたい夢なのか。皆がライルに夢を託している。けれど、ライルはどうだろう。人の夢は変わる。生きていると、否応なしに「叶えたい」から歩んできた現実にぴたっとくっついた足を見て苦く笑って「遠い憧れ」に変化する。勿論、是が非でも叶えるものも「夢」だ。
ライルは北方の草原の血を弾く戦士だ。同じように、アルヤで育ち、シャムシャ、ライル、ルムア、セフィーを大事に思っている。その彼が、放っておいたら何をしでかすか分からない、愛する友人たちを置いていける気がしない。ハヴァースとセターレスへの敬愛の大きさを知ればなおさらである。
自分に最も合った「夢のかたち」は生きていればやわらかく変化する。分岐点に立つたびに、選んで進んでいく。それが、生きていくことなのかと私は考える。この物語で、生き残った者たちはまた選択し、歩いていく。
シャムシャとセフィーもこれから何度も世界に問いかけるだろう。それも、生きているからこそだ。
世界は優しいだろうか。問いかける。現実に生きる私たちも常々世界に聞きたくなる。
生きるって、どんなことだろう? 苦しいし、痛いこともあるよ。
愛するって、どんなことだろう? 苦しいし、痛いこともあるよ。
世界は背を向ける。時にはがらがらとその姿を壊すこともある。
それでも、その横顔は微笑んでいる。
たまには、悪くはないことも、あるでしょう?
世界を歩いて、自分で見つけるんだ。
難しかったら愛しい人と手を繋いで。
眩しすぎる陽の光に、目が眩んで苦しくても、月がかならずその御手でやわらげてくれる。
こぼす涙は世界の雨に。そして、呪いは愛になった。
『マーイェセフィド』を生み出してくださったしゃしゃさまに、心からの感謝をささげます。完結おめでとうございます。