m×c＝s

第1話

「お前、社員にならないか？」

店長が来るなり、事務所に呼ばれて

言われた一言。

20歳から、ここの漫画喫茶で働いて、

早5年の月日が経つ。

今ではすっかり、バイトリーダーてやつになった。バイトリーダーなんてやっても特に給与が上がるわけでもなく、前と同じ生活だ。

家で友達と麻雀やって、ネットオークションで高値で売れそうな物をかって転売。時々、競馬行って、給料日だけパチンコ屋に行く。

それが俺の一ヶ月のフロー。

「なんか社員になんないかて、小嶋さんに言われたわ。」

「えー、マネキングの？なればいいんじゃない？」

付き合って三年の彼女に報告。

彼女、実和子は前、俺がバイトしてる漫画喫茶マネキングで一緒にバイトしてた。

大学卒業と同時に就職。今は銀行員。

なんでこんな真面目でしっかりしたやつが俺と付き合ってんのか、俺もなぞ。

「うーん。やっぱいいわ。なんか、マネキンで働いても安定とかなさそうじゃん」

俺が欲しいのは、安定なのか。

そこもなぞ。

そう。俺の名前は、小吉。

名前の通り、人生小吉。

だから、今更大吉なんて目指さない。