1、ここは、どこ?
「あれ……………ここ……どこ………?」
気がづくと、私は見知らぬ部屋で寝ていた。
◆◇◆
チュンチュンと鳴く、小鳥の声。
朝露に濡れる、夏の若葉。
そんな世界を照らす朝日の眩しさに、私は目を覚ました。
そして――――――次の瞬間、絶句した。
私は、知らない部屋にいる、と。
◆◇◆
ただいま、絶賛パニック中!
頭の中に、かつてないほどの大嵐が吹き荒れている。
(ここはどこ…………っていうか、私、異世界にワープしてしまったの⁉︎)
私は慌てた。
そりゃそーだ。だって訳がわからないもの。
落ち着け、私。ここは一旦冷静になろう。なるんだ、私!
というわけで、とりあえず私は要点をまとめてみることにした。
・私は、道を歩いていた。たしか、塾の帰りだった。
・朝、起きた。そして、気がついたら知らない部屋にいた。
「……………………………」
怪奇現象だ。それか超次元現象。
ホラーだ。それ以外、何ものでもない!
私は、思わず頭を抱えた。
目をこすってみても、何も変わらない。ただ、知らない景色が広がっているだけだ。
ここは、明らかに私の部屋ではない。
その証拠に、ベットから部屋のドア、カーテン一つまで、今まで見たことのない物であった。
部屋の内装はすべて、シックな黒で統一されている。
なかなかセンスのいい………じゃなくてっ!
一体、ここは、どこ??
それはさっきから何度も浮かぶ疑問。
でも、自問自答したところで何の答えも出ない。おかげ頭の中は疑問符でいっぱいだ。
その疑問の答えを得ようと、私はさらに辺りを見回した。
着ているものは、上が着物で下がスカートのような、寝巻。
一言でいえば。私のものじゃない。明らかに、私の所有物ではない。
上が、
下が、丈が短くなって買い替えざる負えなかった学校のジャージでもない。
それに、このさわり心地の良さ!
あきらかに、絹かサテンの類であろう。普段の私なら、一張羅のワンピースならともかく――――絶対に寝間着にはしない・できない
(はっ。もしかしてわたし、どこぞのお金持ちに誘拐されたのの????)
いや、何でそう思うの?!
ここに、ツッコミ役の一人でもいたら、きっとすかさずツッコんでいたであろう。
現実を受け付けなかったのか、この時の私は可笑しいほど厨二病くさかった。
(でもまてよ。ウチって大した額の身代金なんて、とてもじゃないが用意できないと思うけど…………)
はたと振り返ってみる。
そうなのだ。悲しいかな、ウチはあくまで庶民だ。それも母子家庭だったので、生活に余裕などほとんどない。
母が毎日、必死で働いてくれていた姿をずっと見て育ってきたのだ。
だから、どんなに疲れても塾に行って勉強することを怠ったことはなかった。
(…………あんだけ、夏の猛暑に文句を言っていたのに……私は。やはり、不良にはなれなさそうね)
変な所で突然目が覚めたにも関わらず、どこか変わらない自分がいることを発見し、思わず苦笑する。
どうやら自分は、身代金よりも、借財書の方が残念ながら似合いそうな家庭において、贅沢なことはあまり言えないと思って育ってきたようだ。
そんな風に、私が思っていたら。
コンッコンッ。
ガチャ。
「失礼します。お目覚めでございますか、姫さま」
いきなり、扉が開いた。
扉の向こうから、三人ほどの女の人がやって来る。
おそろいのメイド服? らしきお仕着せを身に纏った彼女たちは、私のいるベットの前まで進み出ると、一斉にお辞儀した。
「「「おはようございます、姫さま」」」
(はいっ?! ひ、姫さまって………いったい、なに?)
彼女たちの第一声からそう思っていたが、とりあえず。
「は、はぁ…………。おはよう…………ございます??」
新たな疑問符を頭の中に浮かべまくりながら、挨拶する。
実は、母から
だから、得体の知れない人たちでも、簡単に無視することはできなかった。
それから頭を軽く下げ、
「あ、あのう…………、」
ここは、どこですか?
そう、続けるつもりだったが。
「さあ、朝のお支度をいたしますよ」
「姫さま、こちらから失礼致しますね」
「わたくしは、こちらから」
と、彼女たちはずかずかと私のパーソナルスペースに入ってきて、問答無用で服をはぎ取ろうとしてきたのであった。
私、死んだらいきなり冥界の王女になりました⁉︎ ゆきこのは @yukikonoha
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