勝つひと


 とある祭では気に入った店に花をつけて花の多さを競う催しが行われていた。

 初の順位発表の日、あなたは、祭の入口の掲示板の前に立っている。


 掲示板の上の『優秀な店に賞金!』の文字、その下の順位、あなたの店はその中になかった。


 あなたは上位の店を見に行ったが、納得出来なかった。自分の店は負けていない。

 そこであなたは考えた。どこで?


 そう、掲示板の前で。


 あなたは上位の店に花をつけた人達を見に行った。どんな人がどのように花をつけたのか、直接聞くことは出来なかったがどうやらお礼の花を集めている人が多いようだったので、貴方も多くの店に花をつけることにした。


 しかしあなたは数ヶ月かけて作りこまれた店に適当に花をつけるのは気が引けた。

 そこで、シンプルで見るのに時間のかからなそうな店を探してたくさんの花をつけた。


 そして思い通りあなたは掲示板に表示される順位になった。

 しかし今度はだんだんとシンプルな店が上位に増え始め、こんな声が聞こえ始める。


「シンプルな店と時間のかかる自分の店が同じ様に比べられるのはおかしい」


 しばらくすると敷地に看板を置いただけのシンプルの極地ような店が現れた。目の覚めるような明快さにあなたは思わず花をつけた。


 その店はいつの間にか順位にのり、シンプルさが逆に目立ってどんどん順位をあげていった。まるで評価されない時間のかかる店の人たちの怒りを表すように。

 やがて、そのシンプルな店は順位には載せないことになった。


「なぜあれが突然順位載らなくなるんだ! あれこそ芸術だ!」


 あなたは何を競っているのか分からなくなった。

 やがて優秀な店が選ばれ、あなたの店は最終選考に残れるようだ。

 しかしその発表を聞いた多くの参加者は店を畳んで祭から去っていった。

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 「 」 陸 巴夜 @KugaTomoya

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