第3話 大号泣

 連日、教室にて催される「残酷虐めショー」は過激さを増して、ユジメの精神はついに崩壊した。その翌日からの登校拒否。ひとり苛立つセクアキは顔を真っ赤にし溢れる嗜虐心を必死で制御していた。ガタガタと震え顳顬に血管を浮き立たせ無限に滲み出る汗で教室の湿度を一気に上げた。

 ついにヨロヨロと立ち上がったセクアキはふらふらと壁にぶつかりながら教室から出ていった。心配気に見守るクラスメイト達は声をかける事も出来ないのだ。

 やがて教室の窓の外、よろよろと校門から出て行くセクアキのバイオレンスグリーンの頭が寂しく夕日に一瞬輝き消えて行った。

 今日も「残酷虐めショー」は無かった…これでいいのだ…これでよかったんだ…。ホントにこれでいいのか…誰もがそう思い教室に重たい空気があふれ出し、やがてどこからともなく嗚咽がもれてくる。教壇に立つ私だって気持ちは同じだ。やるせない、まったく力が湧かない、何という水曜日!

 途方にくれ五十三分が経過した頃。窓際の生徒達がざわめき出した。彼らが指し示す指先の彼方に校門をくぐる三つのシルエット!

 全裸で首輪をはめられ四つ足で呆然と歩むユジメ!

 ユジメの手綱を二度と離さないと心に誓ったセクアキの改心の笑顔!

 ユジメに股がる謎の少女!

 嗚呼ついに幕を引く時が来たのだ、感無量である。私は声をあげてここぞとばかりに泣いた!啼いた!鳴いた!哭いた!

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二体の劇薬 @yamitukijukusei

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