二体の劇薬
@yamitukijukusei
第1話 高校デビューの惨劇
入学式が終わり教室内でクラス全員が自己紹介する場面で事件は起きた。生徒各々が順に出身中学やら特技や趣味等を次々喋っていく中、一際目を惹く巨体の雷門セクアキが起立しボソボソ何かを言って座り坂田ユジメの順番が廻ってきた。
「十文字嵐中学校からやってきた坂田ユジメじゃい!ヨロシクのぉ!」とユジメは目をひんむいて言うと机の上に元気良く飛び乗り、前の席に座ってた雷門セクアキのバイオレンスグリーンに染めた頭にゴルフボールを置いて、その後頭部を思いっきり蹴飛ばした。
「ワイは猿やープロゴルファーの猿やーコマネッ!」全て言い終わる前にユジメは激怒したセクアキの鬼のようなハイキックを顔面に受け、教室の後ろの壁に叩き付けられた。
ユジメは鼻血を垂らしながらも気丈に声を振り絞り「ウドの大木と思うたなり敵ながら天晴なり」と弱々しく言ったが、そのセリフは生徒達の悲鳴にかき消され誰の耳にも入らなかった。更に気絶したフリをしてたがセクアキが容赦なくみぞおちを蹴飛ばしたので嘔吐し悶絶していた。
それでも気の治まらないセクアキは惨めに萎縮するユジメに唾を吐き捨て、元々不機嫌そうな態度であったのに本当に不機嫌になり教室を出て行きそのまま帰ってしまった。
私は吐瀉物が放つ不快な臭気の中で開始された「計画」の粗さを案じていた。生徒達の健全化のために用意されたユジメとセクアキという二体の劇薬が今後の動きによっては未成熟な生徒達の悪魔性を顕在化・拡大化させてしまうのではないかという不安を感じていた。
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