第9話(8)

(8)

2019年12月4日

俺は取りあえず、腕時計はスマホを持ってるから良いだろうと、決め。

服も藤本さんに貰った服を着て行く事にした。

靴はちょっと値の張るスニーカーを買う事にした。

40万は出来るだけ減らしたくない。

で、車で渋谷に行きコインパーキングに車を止めた、水曜か・・・時間の感覚が無くなってるな・・・・

喫茶店のカステンドに入る。

緊張する。結構可愛い子だったよな・・・それを騙して・・・アイツらは彼女をどうするんだろう?

15時5分前に彼女は現れた。

好みの少女だった、19歳なら少女で良いだろう。

笑顔でこっちに向かってくる。清楚な感じが実に良い。

こっちも笑顔を返した。

「すぐ分かった?この店」

「はい、山本さん、初めまして、成島佳子です」

「山本高志です。一応、身分証見てよ、最近物騒な事多いからさ、信用してもらう為にもね」

「はい・・・」

「で、君のプロフは信じていいの?」

「えーーと、私は群馬出身で、18で東京に出てきてフリーターやってます」

「一人暮らし?」

「はい」

「恋人は?」

「いません」

可愛い娘だ。こんな娘を騙すのか?しかし、一週間・・・確保して於かなければ、俺がやばいよな。

多分、この会話はスマホで聞かれている。

んで、彼女の事をもう調査されている可能性が高いと思う。

じゃ、彼女は・・・・

俺は・・・・

「どうしたんですか?」

「う、うん、ちょっとレポートの事で・・・」

「慶応大学生って初めて会いました」

「親が金持ちだからね、金さえあれば入れるんだよ」

「いいなー、私の実家は貧乏で・・・・大学も専門学校も行ける状況じゃなくて」

「そうなんだ・・」

「はい・・」

「まだ、夕食には早いよね、映画でも見る?それとも買い物する?」

「じゃ、映画で・・・」

「面白いのやってると良いね」

「はい」

俺は彼女と映画・・・アクションものを見て、適当な高そうなレストランに入った。

正直、金持ちがどういう行動をするのか分からない。

「じゃ、家まで送るよ」

「え、悪いですよ」

「車だからさ」

「そうなんですか」

コインパーキングでレクサスを見せる。まぁ車に疎くても高級車だと分かる車だ。

「カッコイイ車ですね」

「うん、よく知らないけど、オヤジが買ってくれたんだ、あまり車に興味ないからよく知らないんだけどね」

「これ、多分、トヨタの最高級車ですよ」

「へー、まぁ車なんて動けばいいよ」

俺は彼女の助手席を開けてやった。

それから、運転席に乗り込む。

それから、彼女のアパートへ、お茶を出すというのを固辞して帰る事にした。

正直、心が苦しい。

本当にあんな子が彼女なら・・・俺がもっとしっかりしてれば・・・普通に出会えてたら・・・、しかし・・・・・、取りあえず、他の娘も探して、それを供給すればいいだろ、彼女を組織に渡す必要性はない。

いや、組織が命令して来たら?逆らえない?もう、考えるな。

俺は自分の部屋に戻るとシャワーを浴びて、ビールを飲んだ。

しかし、乾きが癒えない、何か頭がざわざわして・・気持ちが悪い。

奥のドアが開く、また藤本だ。

「見てたよ、まぁシャワーシーンを覗く趣味はないから安心しろ。でだ、今苦しいだろ、昨日、注射した薬の効果だ。ほら」

藤本は錠剤を一個俺に渡した。

「飲めよ」

「はい」

俺は錠剤を飲んだ。瞬間的に爆発するように快感が体中を駆け巡った。

「あああああああああああっ」

藤本は面白そうに見ている。

しかし、気持ちが良い。なんだ、これ、こんなの初めてだ。

全てがクリアに見える、綺麗だ全てが輝いて見える。藤本さえ。

俺はソファーに座り込んだ。

段々と気持ちよさは減少して行く、しかし、この感動はなんだ。

麻薬なのは間違いないだろう。覚せい剤?

「これはな、世に出回ってる薬じゃない」

藤本は俺の思考を読んだように言った。

「この薬の効き目は大体24時間だ、切れると地獄を味わう事になる」

「は、はぁ」

「さて、成島佳子だっけ?どうするんだ?考えろよ、いや、考えても意味ないけどな、くくくっ」

俺は射精をしていた・・・、本当にこんなに気持ちのいいものがあるんだ・・・。

女なんてどうでもいい・・・のか?

俺は・・・多分、佐藤に誘われた時に断るべきだったんだ。

40万でこいつらの奴隷になったんだ。

突然激情が沸き、涙が溢れだした。

「お前はマシだよ、馬鹿が多いからな、すぐに処分しないで済みそうだ」

俺が俺の俺は、俺の人生は・・・。

抗うすべはないのか?

「余計な事考えるなよ、マイクロチップがアドレナリン濃度とか測ってるらしい、反逆は即、死だ」

「ぼ、僕は別に・・・、反逆なんて・・・・、ちょっと・・悲しくなっただけです」

「ま、いい、お前が死んでも俺たちは困らん、代わりは幾らでもいるからな、この国の資源ってなんだか分かるか?」

「メタンハイドレードとかですか?」

「人間だよ」

「この狭い国土に沢山の人間が無意味に生きている、分かるか?」

「分かりません」

「じゃ、言う事聞いてりゃ、明日も薬をやるよ」

藤本は出て行った。

俺はベッドに突っ伏して泣いた、こんなに泣いたのは子供の頃以来だろう。

何が悲しいのかわけが分からなくなってきた。

後悔、後悔、奴隷になった、いや、家畜か・・・。

アイツらは人間を資源だと言った。

消費するものだと。

俺の意識は眠りに落ちて行った。

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羊達の望む永遠 高橋聡一郎 @sososo

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