やっぱり猫でした
「いや、俺、そっちの飯がいいんですけど」
俺の目の前に出された、俗に言う猫のカリカリご飯山盛り。
俺はあの食卓で皆がワイワイやって食べてる、その飯がいいんですが。
俺は戸惑ってしまいその山盛りのカリカリご飯を食えなくて食卓をじーっと見つめてると、「じょんちゃんどうしたの?いつもならモリモリ食べておかわりよこせって言うのに…食欲ないの?」とはるが声をかけてきた。
「いや、だから、俺、あっちの飯を食いたいんです、俺、本当は人間で…何故か今は猫なんすけど、本来は人間なんです」とはるに訴えた。
でも、俺は今、現に猫な訳で。喉から出てくる声は猫の鳴き声な訳で。にゃーにゃーと可愛くない声でわめいても、それは結局猫の鳴き声にしかなってない訳で。
でも、はるはじーっと俺を見て、うんうんと頷いた。もしや、今の俺の訴えが通じた?というほのかに期待してると、
「じょんちゃん、もしかしてあっちで食べたいの?」と、俺の考えも虚しいはるの言葉。
「いや、そうじゃなくて、だから俺は…」と言いかけて、通じてない事に諦めて、溜息をついた。
「はいはい、皆と一緒に食べたいのよね、じょんちゃんも」とはるが言って、目の前にあったカリカリの山盛りご飯がすっと視界から消えた。
「じょんちゃんも一緒にご飯が食べたいそうです」とはるが食卓の上にカリカリの山盛りごはんを置いた。
「あらあらじょんちゃん、さみしかったが?」と甲高い声のおばちゃん…いや、お母さんが言って頭を撫でられた。
「いや、でも、衛生上よくないがやろ」と、あれあれ言ってたお父さんは言ったけど、お母さんが「たまにはいいがよ、ねぇじょんちゃん」と俺に同意を求めてきた。
「じょんちゃんも家族やしねー」とゆかりのふりかけのお兄ちゃんが言って、味噌汁にクレームのけんちゃんは無言で見てた。
「さて、私もご飯いただきまーす」とはるが隣に座って、食べ始めた。
いや、俺、その君らが食べているご飯が食いたいんすけどーーーー!
意を決して、目を閉じて俺はカリカリご飯に口をつけた。口に入れる…噛む。うん。
…カリカリご飯って、意外にうまいんだな。何かおかきみたいな食感で、小さい頃に食べたあの麺のおかしみたいな味。これって人間が食ってもうまいんだな。あ、俺は今猫か。にゃー。
腹が減っていたせいか山盛りご飯を凄い勢いで食べてしまった。うまい。
「じょんちゃん、やっぱりお腹空いてたんだね、皆で食べると美味しいよね」とはるが言った。
確かに。食べる物は違えどこうやって食卓を囲むんで飯を食うなんて俺に取って始めての経験だった。
猫と俺と 柳 きよい @hiko12
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