始めました、俺改め。
「おい、大丈夫か?お前」
「うわ、死んでないがね…結構後味悪いちゃ…」
目を閉じていた俺が目を開けると、覗き込むように顔を潜めたイケメンと渋い顔のスーツ姿の男が2人立っていた。
「…大丈夫っす、意識はあります」
と俺が答えると、一瞬顔をキョトンとさせながらも、「あぁ、よかったちゃ、目を開けたっちゃね」とイケメンスーツの方が答えた。イケメンなのに話す言葉は北陸地方の方言なのか…あれ、そーいやさっきのあの猫は無事なのか?でも、さっきからあの猫の可愛くない声は聞こえるし、怪我してなきゃいいんだけど。
「怪我はないんか」もう1人の渋い顔のスーツが聞いてきたので、「あ、はい、ちょっと腕が痛いくらいで…」と答えると、頭の先の所で救急車のサイレンが鳴った。
「なーん、ちょっこ腕怪我しとっちゃ舐めてりゃ治るがよ」とイケメンスーツが答えた。
いや、俺、腕がいでぇんだけど。とイケメンスーツに言うと、「どうすっが?これ…」とイケメンスーツが隣にいる渋い顔のスーツに言ったら、「多分、近所ながやろ、今ショックで動けんやちゃ、そのうちいなくなるがやろ」と背を向けたと同時に、救急車のサイレンが鳴り、救急車が走り去ってった。
「いや、俺、怪我してんすけど…!腕、痛いんすけど…!」と訴えても見向きもしてくれない。おい、こちとら今テレビで指名手配されてる犯人だぞとわめいてみたら、渋い顏のスーツがきて、俺の腕をみて「うわぁ、血が出とるっちゃ、一応病院行くけね」と言われて、病院に行けるとホッとした俺は目を閉じた。あの猫も病院へ連れてってもらえたんだろうか。
…………………
目を開けると、俺を覗き込むおっさんがいて、思わず「うわっ」と声を上げてしまった。相変わらずあの猫の可愛くない声が聞こえてくる。俺、あの猫と同じ病院運ばれたの?もう殺人犯だと動物と同じ病院行きなのかよ。と色々考えてると、
「ははは、もう大丈夫やちゃ、腕をさっくり切ってしもて血が出てびっくりして気を失ったんがね」と、おっさんは笑って言った。
「こいつ身元がわからんが、どっかで」と隣にいた渋い顔のスーツが言うと、おっさんが「あぁ、この子ね、清瀬さんとこのじょんちゃんやね」と答えた。
ん?じょんちゃん?
いやいや、冗談辞めて下さいよ。
俺は、函館で事件起こして全国に指名手配中の…と言いながら起き上がると、
「あぁ、まだ無理したらだめがよ、カルテに家の電話番号あるけ、迎えにきてもらうが」とおっさんが俺の身体をひょいと持ち上げた。
「いやいや、俺、そんなに軽くないでしょ…!」と言ってみた。さっきから猫の声がする。身体持ち上げられて無意識に身体に触るなと抵抗を始めてしまう。
「あらあら、じょんちゃん、相変わらず暴れん坊ながやねぇ」と看護服姿のおばちゃんが出てきた。「いや、だからじょんちゃんって…」と猫の声は相変わらずして「俺は…」と言った所で気づいた。
「あれ、俺、猫になってる?」と。
さっきから聞こえてくる猫の声は、俺が出してる声ってこと?とりあえずおっさんの腕の中でもがいて、降りて鏡を探した。俺、身長170センチあったはずなのに皆の足元しか見えない。立てないし、足が足じゃないみたい。しかも視界が青味がかって良く見えない。
「あっ、こらじょんちゃん!もう、腕怪我しとるが!おとなしく…」とあの看護服のおばちゃんの後ろに周り、ガラス棚の前で止まって、自分の姿に驚愕した。
「嘘だろ…」
ガラス棚に映っていたのは、あの茶白ハチワレの姿をした、猫だった。
「嘘だろ、猫って。こんな事あるのかよ」
俺の身体は?俺は?どこ行った?おい!渋い顔したそこのスーツ!俺はどこ行ったんだ!こんな夢みたいな話し信じねぇぞ!…あ、夢か。夢みてんのか。そうか、俺車に引かれたんだよな。と、全部にゃーにゃーと言うと、「お腹すいとんがんかね、じょんちゃん」と看護服のおばちゃんが俺を持ち上げて化粧っ気のないどアップの顔が俺の視界で映った所でテレビがぶつっと消えたように俺はまた気を失った。
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