幻想は心を結びそして灯は続く
「はいってたんせ」
「おがんでたんせ」
横手のかまくらは冬の一番厳しい時期、二月に行われる。
それは、
この厳しい時期にこの幻想的な光と暖かさを感じることで、
今年を乗り切ろうと言う気持ちを持つことが出来るからかもしれない。
「はいってたんせ」
「おがんでたんせ」
「ねぇ、パパ。この中に入ってもいいの」
「ああ、いいよ。入ったらまず先に水神様にお祈りをするんだよ」
「うん」
今年三歳になる娘の「雪奈(ゆきな)」は返事はするものの、
なかなか、かまくらの中に入ろうとしない。
「雪奈、ママと一緒に入ろっか」
奈々枝は娘の手を優しくとり、
一緒にかまくらの中に入った。
奈々枝は一言
「懐かしい……」としみじみ言った。
「ママ、ママも昔ここにいたの」
「そうよ。昔私もこのかまくらの中にいたのよ」
「雪奈もやりたい」
子供たちの声をまねるように雪奈も言う。
「はいってたんせ」
「おがんでたんせ」
今年もまた横手の街は
冷たく澄んだ空気に、
かまくらから放つ淡いオレンジ色の光が薄暗くなった空と、
その白き雪のコントラストから幻想的に輝くように……
人々の心に暖かさをもたらした。
粉雪舞う季節に宿る初恋の想い さかき原枝都は(さかきはらえつは) @etukonyan
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