42

 カミノ・レアルの事件から半年後


 ロンドン 午前2時

 2階の窓ガラスをぶち破り中から黒い影が飛び出した。

 道端に破片が飛び散っていく。

 破られた窓から男がライフルを構えたが、夜の暗さと逃げた相手の足は早さで狙いはつけられなかった。

 悪態をつく男の横から相棒が、壊れた窓から飛び降りて後を追った。


 逃げた男は、いりくんだ路地に入り込むと身を隠した。

 誰も追ってくる気配はなかった。

 様子を見ようと道の方にそっと顔を出した時だった。

 鼻先に銃口が突き出された。

「どこへ行く気?」

 黒いテンガロンハットをかぶったロングコートの女だった。その瞳は血のように赤い。

「捕まえたか? ミッシェル」

 ライフルを持った男が駆けつけた。

「ああ、コール、結構簡単だった」

「……お前ら。後悔するぞ」

 ミッシェルは男を壁に押し付けると、銃口を口に押し付けた。口元から異様に伸びた犬歯がむき出しになる。

「ふん」

 男は、押さえつけられた腕を押し退けようとしたが、動けなかった。

「おまえ……同類か?」

「はっ! お前なんかと一緒にするな!」

 そう言ってミッシェルは撃鉄を引いた。

「銃に入っているのは教会で祈りを捧げた銃弾だ。当たれば致命傷になるぞ」

「よ、よせ!」

「頭を吹き飛ばされたくなかったらお前らのボスヴァンパイアマスターの居場所を教えな」

 押し付けられた銃口の先から白い煙が上がり始める。

「俺は下っ端だ! 居場所なんて知らねえって!」

「ならしかたがないわね」

 ミッシェルが銃を顔から放した。吸血鬼は一瞬、安堵したがそれは大きな勘違いだった。銃口は左腕に押し当てられ引き金トリガーが引かれた。 

 夜の路地に銃声が鳴り響く。

 下っ端吸血鬼は叫び声を上げた。その左腕は灰となり、白い煙を上げていた。

 うずくまる吸血鬼の頭に再びコルトの銃口が当てられた。

「さあ、居場所を教えな」



 真夜中の吸血列車~Blood Western~  終わり

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