第3話 スキル

『君に与えたスキルは「神の悪戯」と「神の気まぐれ」っていうスキルだよ』


俺は聞いたことを後悔した。


そう思った瞬間、白が持ってた紙に重なるように紙が出現した。


『後悔ってどういうことかな?すごく良いスキルなんだけど?』


「良いスキルってどこがだよ!明らかに嫌な感じしかしないスキル名なんだけど?!」


スキル名から嫌な予感がしていたため白はそう答えた。


その回答なのか、すぐに紙が出現した。


『スキルの内容を知ればそんな態度じゃいられなくなるよ?』


「ほう?なら、どんなスキルなんだよ?」


白は神の態度が気に入らず、そんな挑発するような話し方で聞き返した。


また、間髪いれずに紙が出現した。


『まず「神の悪戯」は、私の意思で君が使う魔法を変えることができるスキルだよ』


「えっと、どういうこと?」


神の言っていることが理解できず、白はそう聞き返すと、紙がすぐに出現した。


『例えを書くと、炎系の魔法を放とうとすると私の意思で勝手に炎系の魔法を失敗させ、代わりに水系の魔法を放つってところ。つまり、君の意思通りに魔法を使えなくなるってことかな』


「はぁぁぁ?!ふざけんなよっ!なんでそんな呪いみたいなスキルが良いんだよ!?」


白はあまりに理不尽なスキルに声を荒げて神に抗議した。


白の抗議に対して、すぐに紙が出現した。


『私がいつ君にとって良いスキルって書いたの?私は(私にとって)良いスキルって書いたんだよ?』


「……」


白は呆れて何も言えなくなっていた。


白は「神の悪戯」が予想よりも酷いスキルだったため、もう一つの「神の気まぐれ」も予想を超える酷いスキルだと思えてきた。


そんなことを思っていると、それに反論するように紙が出現した。


『確かに「神の悪戯」は君にとっては良いスキルじゃないかもしれないけど、「神の気まぐれ」は君にとっても良いスキルだから』


「ほう?じゃあ、どんなスキルなんだ?」


白はある程度後の展開が読めていたし、ロクでもないスキルだと考えていたため、そんな挑発するような言葉になっていた。


白の言葉に答えるように紙が出現した。


『「神の気まぐれ」は1日3回のみ使えるスキルで、私がその時の気分で事象を1つ起こすスキルだよ』


「やっぱりクソスキルじゃないか!なんでお前の気分で結果が左右されなきゃいけないんだよ?!」


結局、神の気分で全てが決まることに納得できず、白はそう叫んでいた。


ただ、神は白のそんな態度が気に入らなかったため、すぐに紙で反論した。


『ランダム性があって楽しそうでしょ?!』


「ランダム性ってお前の気分じゃねぇか!ランダムでもなんでもないだろ?!」


確かにガチャとかのランダム要素はワクワクして楽しいけど、このランダムは明らかにガチャのそれとは違っていた。


神はやはり白の態度が気に入らず、すぐに紙で反論した。


『そんなことを言っていられるのも今のうちだから!「神の気まぐれ」を使ってみれば、それの重要性がわかるから!』


「じゃあ、やってみようじゃないか!……でどうすれば使えるんだ?」


神の挑発に白は我慢できず、それを受けた。ただ、使い方など一切わからなかったため、神に使い方を聞くという、少し締まらない形になってしまった。


白の質問に神はすぐに紙で答えた。


『使用方法は簡単だよ。ただ、左右どちらかの手を開いて突き出して「神の気まぐれ」って言うだけだよ』


「簡単すぎだろ」


白はその使用方法に呆れていた。でも簡単であることに不満はなかった。いろいろと準備が必要で時間かかるのは面倒だからだ。


「神の気まぐれ」


白は納得していなかったが、右手を開いて突き出し、そう言った。ただ、その言葉を言うのは少し恥ずかしく、声が小さくなってしまった。


白がそう言うと右手を突き出した先に大量のの金色の物体が現れた。


「え???」


白は意味がわからず、しばらく状況を飲み込めずにいた。


少しずつ状況を把握しようとしていると、その大量の金色の物体の上に紙があることに気づいた。


金色の物体に近づき、その紙を手に持ち読んでみた。


『スキル「神の気まぐれ」によって1兆ピアのお金が出現しました』


「は?」


白はその紙に書かれている内容が飲み込めず、しばらく固まっていた。


しかし、神はそれを許さず、紙を白の目の前に出現させて、白を現実に引き戻した。


「うわっ!」


白は呆然としていたため、いきなり現れた紙に驚いてしまった。


『どう?すごいでしょ?』


白はその紙に書かれていた神の勝ち誇ったような文章が気に入らなかった。そのため、その出現したお金にも何か白を騙すようなことが仕掛けられていると思っていた。


「ふ、ふん、どうだか。俺はこっちの相場とか桁とかも知らないから、なんとも言えないな」


白は、そう言って神が何を隠しているのかを探った。神はすぐに紙で答えた。


『1ピアで1円で、大体1食10ピア程度だよ。桁は君の知っているのに合わせたから、一、十、百、千、万、億で兆だよ』


「大金じゃねぇか?!」


あまりに大きすぎる金額に白は驚いた。どうせ大した額ではないと思っていたからだ。これだけあれば、贅沢さえしなければ、一生過ごせるだけの金額があった。


「って、どうやって運べば良いんだよ?!」


大金に喜んでいたのも一瞬で、すぐに欠陥に気づいた。目の前には大量のお金があるが、それを運ぶ手段も保管する場所もなかった。結局白にとっては意味のないものであった。


白が現実を受け入れられないでいると、紙が出現した。


『まあ、そんなこと気にしていても仕方ないから次いってみよう!』


「——わかったよ。神の気まぐれ」


白は反論したかたったが、ほかにすることもなかったため、神の言うことに従い、右手を開いて突き出し、そう言った。


「?」


ただ、今度は目の前には何も現れなかった。


やっぱりクソスキルか、と思ったいると、白の手元に紙が出現した。


『スキル「神の気まぐれ」によってスキル「ストレージ」が使えるようになりました』


「ストレージ?」


白がそう呟くとすぐに紙が出現した。


『スキル「ストレージ」は任意のモノを亜空間に出し入れすることができるようになるスキルだよ。モノに触れながら、念じるだけでモノの出し入れができるよ』


「なんで欲しいスキルが手に入るんだよ!」


白は神の対応に困惑していた。神が白にとってメリットになることをするとは思えなかったからだ。


白がそう叫ぶと紙が出現した。


『私だって君にずっと酷いことをするわけじゃないんだよ?まあ、アメとムチってやつだね』


「あー」


神のアメとムチに少し納得してしまった自分が嫌になった。


それから、お金をスキル「ストレージ」を使ってしまっていった。触れているモノしかしまうことができずかなりの時間がかかってしまった。


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