第2話 これから
神の好感度が最低になったところで、これからについて聞いておこうと思った。何しろ、この神は、俺のことを元の世界に帰してはくれないらしい。だから、いつまでもこんなところにいるのは、時間の無駄だと思ったのだ。それに、異世界には憧れもあり、楽しみでもあったから、早く異世界らしいことをしたかった。
俺がそんなことを思うと、紙が俺の目の前に出現した。
いい加減俺も慣れたもので、ほとんど驚かなくなっていた。
『ほら、異世界に連れて来てあげたんだから、私に文句ばかり言ってないで、お礼でも言ったら、どうなのかな?かな?』
俺はその文章を見て、お礼を言う気になれなかった。もう少し、自分勝手ではなく、俺の気持ちも尊重してくれれば、そんなことも思ったのだろうけど、あんなことをされては、お礼なんてありはしない。
そんなことを思う、また紙が出現した。
『なっ?!その言い方はひどいじゃないか!私は君の願いを叶えたようなものなんだから、ありがとうくらいは言っても良いと思うんだけど!』
「わかったよ、ありがとう」
『えへへ、どういたしまして♪』
そう書かれた紙が出現した。
この自称神様はなんともチョロい。こんなので良いのか?と思ってしまうほどだ。
そう思うまたしても紙が出現した。
『君は、お礼を言われて嬉しくはないの?どんなに棒読みで感情がこもってないお世辞でもお礼を言われるの嬉しいものだよ?』
何故か説教っぽいことが書かれていた。
わからないでもないが、そんな言葉で良いのかとも思ってしまう。
と、そんなことで言い争っている場合ではない。今の状況を把握することの方が重要だ。
そう思うとまたしても紙が出現した。
『そんなことって酷いんじゃないかな?』
そう書かれており、面倒な神だなと思った。
ちょうど、俺がその文章を読み終わったところで、紙に重なるように新しい紙が出現した。俺は今までと違う紙の出現に驚いてしまった。
今までは俺の思考の後に出現して、会話しているような感じだったため、慣れれば、驚くことは減った。
でも神は俺がこの状況に慣れてきていることが気に入らないのか、新しい方法を取ってきた。
『まあ、君の言っていることも正しいし、色々と説明することもあるから、早く進めていきますか』
新しく出現した紙にはそう書かれていた。
「説明?」
俺は、紙書かれていた「説明」という文字が気になった。
俺がそう声に出して、聞き返すとまた紙が俺の持っている紙の上に出現した。今度は、会話になっていたため、それほど驚くことはなかった。
『ああ、そう言えばまだ言ってなかったね。私は君が突然よくわからない土地に召喚されることは可哀想だと思ったから、いくつかのスキルを君に与えたんだよ。説明というのはそのスキルについてのことだよ』
なるほど、そういうことなのか。
というか、神にこんな良心があるとは思わず、驚いてしまった。ただの鬼畜な自称神だと思っていたから意外であった。
そう思うとまた紙が出現した。
『私もそう思われると悲しいよ?それにいつでも君からそのスキルを剥奪することもできるんだよ?』
「申し訳ありませんでしたっ!!」
俺は目の前にいない神に向かって土下座で謝った。
いくらなんでも身一つで異世界を生き抜くなんていうハードモードはやりたくなかった。
俺が土下座から頭を上げるとちょうどよく新しい紙が出現した。
『別に私は鬼畜だし、君からどんな評価であろうと気にしないから謝る必要なんてないんだよ?ただ、その時どうなっても知らないからね?』
考えることにも気をつけなければと心に決めた。
俺がその紙から手を離す際、その紙の下の方に何か書かれていることに気づいた。
『まあ、冗談はこれくらいにしておきますか。私も一度与えたスキルを剥奪なんてできないし』
「このクソ神が!!」
俺は心の底から思っていたことを叫んだ。
そう叫ぶと新しく紙が出現した。
『あはははっ。気づかれちゃったか。まあ、気づかれた方が面白いし』
ほんとにこの神にはうんざりした。
ただ、もし気づけなかったときのことを考えると寒気を感じた。死ぬまでこの神という化けの皮を被った悪魔のご機嫌とりを続けないといけないとか、考えただけ恐怖であった。
でも、書いている辺りこの神からも多少の良心は感じた。
そう思うと、再び紙が出現した。
『そうでしょそうでしょ。私だって良いところはあるんだよ』
ただ、その一言さえなければと思うけど。
「そういえば、俺に与えたスキルってどんなスキルなんだ?」
スキルを与えたとしか言われておらず、具体的にどんなスキルを貰ったのか気になりそう聞いた。
そう聞くと紙が出現した。
『やっぱり気になるよね?』
「そりゃあ、そうだよ」
なんか神の言い方がうざかったが、それは気に留めず、肯定した。
それが良かったのか、紙はすぐに出現した。
『君に与えたスキルは「神の悪戯」と「神の気まぐれ」っていうスキルだよ』
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