結ばれた赤い糸

会社帰りにすれ違った恋人たち

その光景は今でもあの頃の面影を

少しばかり思い出させる


でも、


あの日からの未練なんてものは

ちゃんと思い出に変わったよ


僕と君は別々の道を歩むけど

君を好きになって

一度は同じ道を共に歩めたこと


それを無かったことにするのは

君に失礼だよね――


ポストに届いた一通の招待状

「そっか、おめでとう」

白い息と共にぼそっと呟く


――だけど君の進む "これから" は

心からお祝いできるよ


君がしてくれたみたいに

今度は僕が心からの祝福をしよう。


結婚、おめでとう


玄関を開けて招待状を棚に置く

棚には写真立て

その中には三人の幸せそうな笑顔が


「パパー、お帰りー」

「おかえりなさい、パパ」


玄関まで出迎えてくれる、娘と貴女


「ただいま、明日はホワイトクリスマスなんだって」

「ホワイトクリスマスって?」

「クリスマスの日に雪が降ることよ」

「じゃ、サンタさん。ちゃんと煙突から来てくれる?」


煙突……。それは換気扇なんだよな

指差す娘に貴女と苦笑い


「そうだな、来てくれるといいな」

「そうね。パパも帰ってきたし、ご飯にしよっか」

「うん‼︎」

リビングに広がる、ごはんの匂い


僕は幸せだ。



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ほどけた赤い糸/結ばれた赤い糸 幸葉 紡 @Sachiba_word

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