第24話 裸は性別を超える
男なのに、なんでこんな恥ずかしい思いをしなくてはならないのでしょうか?
全部あの犬のせいです。
もう、お婿にいけないかもしれません。
身体を舐め回されるような変な視線を避けたくて、肩まで水に浸かると前の世界であったお決まりのお色気シーンを思い出し、気恥ずかしくて背を向け、早く皆が入ってくるのを待つ乙女のような俺。
ワイワイ話しながら人間の男は、みんな服を脱いで素っ裸になって湖に入り、モンスター達も次々と入水していった。
ブルーノは、当然と言わんばかりに、ご機嫌なのか鼻歌交じりで俺の側にやって来ましたよ。
悪戯をされた感、とてつもなく満載だったので水を掛けてやった俺は悪くない。
子供相手にって思うけど、俺も子供なんです。
女達は、アレコレ話し合って下着で入水した。
一応美女なのに、驚くほど色気を感じないので、哀れで涙が出た。
「エルさん…そんな泣くほど感動しないでください。刺激が強いかも知れませんが…」
「余りの色気の無さに涙が出ただけなんで勘違いしないで下さい。」
「酷いです!私は、肌を人前に出したの初めてなんですよ!」
「はっきり言ってやる。サフランもサラも素っ裸で入っても誰も何も思わない。」
2人はショックのせいか唖然と固まっていた。
「ポールくらいなら反応するかもよ?」
乾いた微笑みを顔に張り付かせている兄ちゃんの言葉に、2人が急にモジモジと身体を動かし、上目遣いでポールを見ると、ポールは心底ウンザリした目で2人を見た。
「すまんが…なにも思わない。同僚と子供に興味はない。」
「子供に興味がないのに、エルの裸だけは興味があるんだね。変態だね。変態騎士だね。」
言葉って人に確実に刺さるんですね。
物理的攻撃を避けることは余裕な騎士でも、アジュの言葉は避けられないんですね。
ってか、俺の裸に興味があるとか…絶対に言葉には出さないけど変態騎士なんですね。
わかります。
でもね、変態に変態と言ったら燃え上がるんですよ。
わかります。
汚い大人を見る目で見ていることに気付いたポールが、慌てて両手を振りながら訂正しだした。
「違う!エルの場合は、絵画のようだったから見てしまっただけだ!!邪な気持ちで見たわけじゃない!」
「確かに絵画みたいだったよね。」
ポールを哀れに思ったのか、兄ちゃんが助け舟を出した。
助け舟を出すまでは、かっこよかったんだけどなぁ…
お兄様。
何を考えているのかわからないけど、俺を凝視しないでいただきたい。
意味不明の視線を避けるために、大きいシルバの隣へ移動して隠れた。
《エル…体を疲れはとれたか?》
「ああ、体の疲れはとれたけど、大事なものを失った気がするよ。ははは。」
《綺麗なものを鑑賞することは良いことだと聞いたことがある。そう、気に病む必要もなかろう。》
「あのね、自分のことを美少年だとは思うけど、鑑賞されるような美術品だとは思ったことないよ!
まったくもう!ブルーノも変なこと俺にさせるんだから!」
《える、きれい!おみず、もり、よろこんでる!》
喜ぶことなんてないだろ。
本当に喜んでるんだとしたら、とんだ変態湖と変態の森だよ。
まぁ、炭酸泉でみんなリフレッシュできたから許すとするか。
それに男が、裸位でいつまでもウジウジ言ってるなんてそれこそ格好が悪いからな。
「仕方ないな…許してやるよ。」
《える!すき!》
べっちゃべちゃに濡れている毛を手櫛で梳かし、寄せてきた鼻に自分の鼻を擦りつける。
はい、動物大好きなんです。甘やかしちゃうんです。
「エル、俺も!!ブルーノばっかり可愛がってずるいよ!」
「アジュは、犬じゃないだろ?」
「ブルーノも犬じゃないもん!」
アジュが、じゃれてシュワシュワした水しぶきを上げながら抱き着いてきた。
いくつになっても甘えん坊な弟だな……
うん
離れよう!
「アジュール!!怖い!!!」
柔らかな頬が赤くなり、鼻息が荒くなってきた弟に恐怖して、体を突き放すと全力で泳いで逃げた。
振り返ると兄ちゃんとポールが俺とアジュの間に入って行く手を塞いでくれていた。
感謝!
裸だったから余計にマジで怖かった…うっかりブルーノと同じ気分で受け入れちゃったよ…
次から気を付けよう。
《える、まって!あんまり、おく、だめ!》
「え?奥になんかあるのか?」
《おく、ふかい。おみず、すっごくつめたい!える、たいへんになる!》
なるほど。今のところ足がギリギリ付くくらいの場所だけど、どんどん深くなっていくのか。
25mプールみたいなんだな。
「エル―!そろそろ上がって食事にしよう!」
「エルさんは、私たちと一緒に着替えましょう!念の為!」
嫌だ!女子扱い!!!
でも、アジュが怖いから二人の方に行こう!
背に腹は代えられんよ!
ブルーノと一緒に泳いで女子組に混ざり、大きな木の陰で体をふき、ブルーノの持ってきてくれた服を身に着けた。
「俺は全裸で入ったから服そのままだけど、二人とも下着びしょ濡れでどうすんの?」
「ふふふ…最新式の魔道具があるんです!」
手のひらサイズの正方形の箱を腰に下げていた袋から取り出した。
魔道具だと!?しかも、最新式!?
サフランのくせに生意気な!!金持ちアイテムじゃねーか!
「ふふふ…これは旅の女性を助けるアイテムとして売れに売れてるんですよ!」
「さすが、巫女様!!」
「流石じゃない!!しっかりポールと計画立てまくってたんじゃないか!なんだよ、その箱!」
「これは、箱に入れたものを瞬時に乾燥させる道具なんです。」
「女性の下着専用だから小さくて持ち運び便利なんですよー。私も欲しかったんですけどなかなか売ってないんです。」
つ…つかえねぇ!!!パンツとブラ専用って…無駄に魔道具作ってんなよ!
魔道具職人ってすんごい少ないんだろ!?
無駄!材料も研究時間も製作時間も!
だって替えの下着持って歩けばいいじゃん!!!
「さぁ、使いますよ?ふふふ…」
女性陣のテンションについていけないが、使うとこ見ておこうかな…
二人は、魔道具を使うテンションで俺が男だという事をすっかり忘れ、すっぽんぽんになると次々に箱へ下着を入れては乾かしを繰り返した。
「きゃー!凄いですね!あっという間ですよ!」
「下着も綺麗になって一石二鳥ですね!」
きゃいきゃい騒ぎながら下着を身に着け、服や鎧を身に着ける。
俺はといえば、目の前で遠慮なく繰り広げられた人生初のオッパイ祭りにガッカリしていた。
まるで母さんの裸を見ているのと変わらない虚しさ。
年頃の美女も恥じらいがなければ、ただの親戚です。
「二人とも…また、入浴や沐浴することがあったら全裸でいいよ…」
「「えっ!?いやーーーーーん!!」」
「俺の方が嫌だよ…」
村長さんちの次男坊です。改稿版 小さい飲兵衛 @kontou0410
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