書きたいから書く、書かねばならないから書く、衝動のままに。そして何時か、誰かが手に取り巡り合うことがあるだろう。趣のある文章が「美しい物語」を読ませす。
1話目では旧字体で物語が始まります。その状況から過去のお話だと読み進めていくのですが、2話目には現代語へと変化します。慣れない文体から、普段読み慣れている文体への転換。物語と一緒に時を超えているような錯覚を覚えました。物語全体を通して穏やかな空気が流れているような、どこか夢を見ているのようなタイムスリップ物語です。
三話を一気読みしてまず思ったのは、レビューの一言でした。古本屋の片隅から抜き出した本の、あの埃っぽいような独特の匂い、色、感触がよみがえる第一話に続く第二話は一転して抑えた色彩のカラーになり、第三話の最後で鮮やかな色彩になる――――第一話が旧字体というのにとっつきにくさを感じる人はいるかもしれませんが、それが気にならない文量や構成、展開だと思います。奇跡を読みたい人にはお薦めです。
第1話の文体が、ご馳走を食べるみたいにとにかく美味しくて、もっと食べたいって思ってしまうくらいでした。2話3話も苦くて甘くてふわふわっとしていて、美味しいごちそうです。(文○少女みたいなおかしな?表現になってしまって恐縮ですが、本当にすごく美味しかったです!)(文章を読んで美味しい食べ物を食べたような気持ちになれたのは多分初めての経験でした!)
少し不思議な恋愛短編もの。SFというレビューに惹かれて一読。タイムリープだったのかそれとも儚い幻だったのか。とある不思議によって繋がった関係はまさに運命と言ってもいいのかもしれませんね。全体としてロマンチックな雰囲気があってよかったと思います。女性向けの恋愛短編となっているこの作品。恋愛もの好きの方は是非読んでみてください。
いわゆるタイムリープ物で片づけてはいけない。そんな気がしました。この恋は、ある運命に導かれた必然的な出会いであって、決して神様の気まぐれなどではない。古き良き時代の純粋な人の想いが時間の概念すら捻じ曲げて「想い人」の元へ届いた、まさに純愛SFとでも呼ぶべき良作。物憂げな雨の午後などに読むと、ノスタルジックな気分を味わえる。そんな作品です。さる