ヘビーメタルと純文学。決して現代の主流なカルチャーにはなり得ないこのふたつが、渾然一体となって綴られる文章は類を見ない独特なものになってます。16ビートのバスドラム、トレモロピッキング、そして文豪の魂のシャウト。ぜひ、読んでください、というよりも、聞いてください。主人公が楽器店で試奏をするときに、「とりあえずEを弾く」という表現がありますが、「わかるわかるw」と思いました。とりあえず、EかEマイナー(※ただし半音下げ)ですよね。
メタルも文学も、どちらも大好きな私は、曲のイントロや作品の寸評が作中で出るたび思わずニヤついてしまう。メタリカの話も、キッスの火吹きも、文学の話も、分かりすぎるほど分かるんだ。だけど、ラヴクラフトの表記がラブクラフトなのだけはいただけない。せっかくメタルと文学という、普通の人には水と油のような題材を扱っているのだし、メタルの観点から文学を考察したり、逆に文学の観点からメタルを考察したりしても面白いかもしれない。メタルと文学それぞれの要素がスパッと分かれたままなのは、もったいないと思ってしまう。