安土を捜して

@yutoami666

第1話困惑

「安土桃山時代」と聞いて、あなたはまず、何を思い浮かべますか?織田信長、戦国、豊臣秀吉までは、まあまあ普通に普通の感覚ですが、「滋賀県」なんて、なかなか思い付きません。安土桃山時代、そう織田信長が天下取りの終盤に選んだ地、近江。いまの滋賀県安土町に住む「心の葛藤」の部分のお話を、少しだけ聞いて頂きたくペンを取りました。安土町にわたしが移り住んだのは、いまから六年程前の真冬のこと、それまで間借りの様に住んでいた京都を離れれ、お隣の県に越して来たのには、いろいろと大人の理由があってのことなのですが、そのことについては今回は、はしょるとして、、、。なにはともあれ、親戚縁者、知り合いさえ皆無の地に意気揚々と越してきたのです。知り合いはいないけれど、厳密に言えば知ってる人はいました。て言ってもそれは織田信長のことなので、なかなか人に、お胸張っては言えませんが、当時のわたしには信長が唯一の頼り。ビルに恋をする女性がいる世の中、実在した人物に、仮想恋愛するのも、そう不思議ではないかも知れません。たぶん、、、、。安土は、12000人足らずの小さな町でして、JR東海道本線の各駅が停まります。京都まで乗り換えなしで40分程度。便利と言えば便利かな?駅前では、2軒のレンタサイクル店が凌ぎを削り、ランチのいただける、お蕎麦屋さんがひとつ。うん、とりあえず他に見所のないまま、北の方向に歩を進めると20分位で、この町いちばんの観光名所であり、戦国ファンの聖地、安土城跡が、信長の息吹を残し、威風堂々と鎮座しているのです。安土城に最初に訪れたのは、2006年。琵琶湖を挟んだ対岸にある、おごと温泉に3日も宿泊し、毎日、毎日、朝から夕方の閉山までを安土城で過ごしました。なぜ、ここまで安土城に、また織田信長に魅せられたのか、実のところ、いまではわからないのです。安土に越すことで捨てなくてはならなかった大きな代償を考えると、今更、信長に対して抱いた感情がはしかのような物だと認めることが怖いだけなのかも知れません。認めてしまえば、この数年の決断の数々は無になってしまう。時間や空間だけではなく、形あるもの、失ったもの。無情にも失わせ、変えてしまった人々の人生を、わたしは受け止められないのではないか。だからまだ、この安土にしがみついている。時は空虚に流れ、年齢だけを無意味に重ねてきた。わたしは殆どこの地球上に生きる意味すら見出だせないでいる。あの時の決断。人生の帰路、別れ道。わたし以外の人々は、迷わず正しい道を選んでいるのだろうか?常に、そんなことばかり考えて、今年もまた安土で年を越すのです。

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