第8話
次の日の朝、俺が家を出ると野上が待っていた。
何時もとは違う表情で。
「おはよう、鴨志田君」
「あ、ああ、おはよう野上」
明らかに野上の今日の印象は暗い。
「早く行こうぜ」
俺はその野上の事を考えないように、野上を無視するかのように駅へと向かった。
野上は俺の後を小走りでついてくる。
「鴨志田君」
「何?」
「話があるの」
俺たちが途中の比較的広い公園に差し掛かった時、野上が思いつめたような声で言った。その声はまるで自分の犯罪を悔いて告白する犯罪者のようだった。
野上は無言で俺の手を本当に微かな力で握ると、公園に導いた。
朝の公園はほとんど無人だった。天気がよく、木々が美しい。
俺はボケっとそんなことを考えていた。
野上は人を気にするように周りを見渡すと、俺を男子便所へと連れ込もうとする。
「おい、ここ・・・」
「いいから来て」
野上は俺を男子便所の個室に連れ込むと鍵をかける。
野上の健康的な臭いが香った。
性欲が活発に活動し、頭を占める。
「聞いてください」
「え、うん」
「ごめんなさい。謝罪します。貴方に無理やり変なことをして」
「あ、あれか、べ、別に、いいよ、俺は嫌じゃなったし、実は」
「私は嫌だった」
「え・・・」
「私は貴方が強引に迫ってきた時、怖かったの」
「あ、あれは・・・」
「色々と怖かった。色々考えたわ」
「・・・・話はそれだけ?」
俺の中には性欲しかなかった。好きな女の子への強烈な劣情。そしてその期待を裏切られた失望感。
俺は、トイレを出ようと個室のドアの鍵に手を掛ける。
その手を野上が制した。
「触って」
「えっ」
「好きなように触って、気のすむまで」
「いいのか・・・」
野上がコクリと頷くと、俺は手を野上の体に伸ばした。
野上の表情など見ようともせずに。
俺は興奮した。
胸を揉んでも、足を触っても、髪の臭いを嗅いでも、性的な愛撫をしても野上は拒否しなかった。
だが、野上には黒木が昨日発したような性的な熱が存在しないようだった。
女性が敏感だと言われる部分を触っても反応を示さない。
「出して、貴方の性器」
「あ、ああ」
俺は急いでズボンを下ろすと性器を外気に露出させた。
俺のモノはカチカチに勃起していた。
野上は震える手で俺のモノを掴むと優しく愛撫した。
「の、野上」
「出して」
「あ、ああ」
「気持ちいい?」
「いいよ、野上・・」
俺は少しの刺激で劣情の塊を飛ばした。
はぁはぁと息を荒くする俺の頭を野上が撫でる。
全てが満ち足りた気がした。
「鴨志田君」
野上が落ち着いた声で言った。
「なに?」
「貴方が望むなら、私が貴方の欲望を解消してあげる・・・・・、だ、だから他の女の子に手を出すのは止めて欲しいの」
「・・・・黒木のこと?」
「黒木さんもそうだし・・・」
「・・・・・また、してくれるのか?」
「ええ、貴方が望むなら、好きなだけ私の体を触ってもいい、貴方の欲望も出してあげる、だから約束して欲しいの」
「・・・・・分かった」
野上とは公園を出たところで別れた。
ちょっと体調が悪いので家に帰るという。
俺は公園で少し呆けっと空を見上げて時間を潰してから家に帰った。
色々と考えなきゃならない気がした。
野上の少しも濡れなかったパンツとか色々。
彼女彼氏の事情 高橋聡一郎 @sososo
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