第4話 第1回会議
剛の最初の夜の感想は『痛かった』である。
地面で寝るというのはこんなにも痛いことだったのかと、まさに痛感した。
だた、幸いなことに・・・・・・いや、幸いかは分からないが、ホームシックのようなものやこれからの不安といったものには襲われず、意外と心の面ではスッキリとした気持ちで目が覚めた。
おそらく、剛は大臣衆という新しいコミュニティーを手に入れ彼らと上手くやっていると感じていることが、そういったことから守られたのだろう。
剛が起き上がると彼らは大臣衆はすでに起きていた。
そしてケイとコハルが維持してくれていた焚火を囲むように座っている。
焚火のそばには夜にケイとコハルが新しく燃料となる木の枝を集めてくれていた。
その横には草鞋も人数分完成している。
「結局昨日は全部食べちゃったから朝飯はこれから採りに行かないとな」
剛は少し考え込む。
「クミ、ケイ、コハルは俺とここに残って、他の皆は現地で食べてきて。で、帰りに俺らの分を持ち帰ってきてくれるかな。もちろんワラジを履いてね!」
「分かりました」
「今回は明るいしワラジもあるし、大体場所も分かってるだろうから30分後に集合ってことで」
そう言うと彼らは動き出した。
彼らを見送ると剛はまた考え込んだ。
(結構、やること多いよなぁ・・・・・・)
1時間後には朝食も終わり、いよいよ第1回会議の雰囲気になった。
「ま、なんてったって情報の整理だよね」
大臣衆は頷きもせず剛の話を聞いている。
「とりあえずみんながここまでで気付いたことを言ってもらっていい? 昨日言ったような獣がいるかもとかさ」
「虫も結構いました。どれも私たちの知識にはない虫でした」
「植物もどれも私たちの知識にはない珍しいものも結構見かけました」
「あ、その知識ってどれくらいのものか分かる?」
「王様と同じ知識でございます。私たちは王様をベースに作られていますので」
「あ、そっか。了解! じゃあ、植物の専門的な知識はないけど、それでも明らかに地球では見かけなかったって感じかな?」
「はい。その通りです」
「他には?」
「そのことからの推測でもよろしいでしょうか。確証がないので気付いたとは言えませんが」
「宇宙的な物理法則は地球とほぼ同じではないでしょうか。地球と心球では星が違いますので独自の動植物の生態系を持っているとも思いました」
その言葉に納得しつつも、剛は大臣衆について気付くことがあった。
(感情はないのに感じたり思ったりは出来るのか。意思はないけど考えたり分析はできるって感じなのか?)
「それね。かなり俺も納得できる気がするよ。リンゴ型の果実もあれだけ美味い物が地球で無名な訳ないもんね」
「はい。ですが、木を燃やしたり出来ることを考えると火というものの物理法則は共通しているように思います」
「確かに。そう考えると重力もあるか」
剛は立ち上がりその場でジャンプした。
「体の重さとかジャンプ力とか地球と変わった感覚がないからこの惑星は地球と同じサイズってこともなんとなく推測できるかもね」
「はい。確実とは言えませんが」
「ああね、引力の強さが地球と同じなら大きさも同じだけどってことか・・・・・・」
「はい。ですので、引力があるということは法則的に似ているということまでなら言えるかもしれないです」
「ま、今はその程度の認識でも問題なさそうだし、その程度でいいよね。他には?」
「体感での話ですが、一日が少し短いような気がしました」
ケイが話し始めた。
「あ、正確には一日はまだ経っていないので正確には夜だけの判断ですが」
「短いと感じたの?」
「はい。日が沈んでから日が昇るまでの間隔での話です」
「うーん。かなり難しい話だね。この惑星の時期的な物もあるかもしれないし、確認のしようがないね」
「はい。申し訳ありません」
「いやいや。そう言う意見も欲しかったんだ。ありがとう。・・・・・・確かに1日が24時間という思い込みはあったからそれに気付けたよ」
剛はケイに向かって笑顔を見せてフォローした。
「他に気付いたことは?」
大臣衆は沈黙した。
「じゃあ、これからのことについての意見を募集します! これからの方向性から行ってみよう」
「どのような方向性でしょうか?」
カナが聞いてきた。
また、剛は気付いた。
(何となくカナが大臣衆の代表のような感じがするな。石斧を渡したのがカナだったからか?)
結果を述べるとその通りではあるが、王である剛にとってはあまり関係はない。リーダーを別に任命すればいいだけのことである。
「探索に関してだね。大きく二つに分けると先に探索をして情報を集めるか、生活基盤を十分に準備をしてから探索をするかって感じかな」
「基盤の方が先の用の気がしますが」
「俺もそんな気はするんだけど、食料が尽きてしまったりさ、情報不足で作ってる最中の基盤が崩れたりするリスクはあると思うんだよね。情報がないからどんなリスクがあるかが分からないのが怖い感じ」
「確かにその通りです」
「ま、先に探索するのもリスクがあるって思えば基盤が先だよね」
「はい」
「じゃあ、その基盤を作るとして、何を作るとか優先順位とかかな」
また大臣衆は頷きもせず沈黙した。
「まずは必要なものから言ってみようか。工程や難易度やらいろいろ考えることはあるだろうけどいったんそれを無視して、必要な物とか欲しい物とか。ま、普通に家は必要だよね」
「はい」
そして、剛にとっては思いがけない沈黙がおきた。
(あれ? 他にないの?)
「あの、もう少し近々に必要な物とかでもよろしいでしょうか?」
「いいよ?」
「もう少し網目を細かくした縄網を作るのはどうでしょうか。あと、大きさももう少し大きい物もあると良いかと」
「あ・・・・・・」
ここでようやく剛が気付いた。
(しまった・・・・・・・。基盤って言葉で家とか水道とかそんなものを考えてしまっていた。食料やそう言えば水の確保とかもまだだっていうのに・・・・・・・)
「ごめん。そうだね。そういう話の方が先だった」
剛は落ち込んだ。
その姿にカナがフォローとして提案を続ける。
「水を見つけた際に持ち運べるように土器を作るのはどうでしょうか。天秤棒に縄でぶら下げれるようにすれば持ち運べる量も増えますし」
「うん。それ採用」
剛は少し元気になった。
今度はオルガが提案する。
「干し草用の草を集めるのはどうでしょうか。あと、木の蔓も集めると紐として使えると思います」
「そうだね。採用」
彼らからは次々と意見が出てくる。
しかし、剛は木を使われているような気がして複雑な気持ちになった。
「食料採集の場所までの道しるべがあるといいと思いました。木を組み合わせたり石を積み上げたりで方向が分かるようになっていると迷いにくくなると思います。念のためではあるのですが」
「それくらいなら簡単だし採用だね」
「土器を作るのでしたら、一緒に皿やコップもあるといいと思います。水や食料が確保出来たら鍋のようなものも作っておくと色々と活用できるかと」
「採用」
段々と剛は自分だけが現在の状況を把握していなかったことに恥ずかしさを覚えた。
大臣衆は何とも思っていないことは理解しているが、本能に近い部分で恥ずかしいという感覚に襲われてしまっている。
(気にしない気にしない気にしない!)
剛は何度も心の中でそう唱える。
「よし、分かった! 班分けをしよう!」
唐突に剛が言い放つように声を上げた。
「食料班、材料班、道具班。いい?」
「はい」
剛は座っている順ではなく、担当の割り振りを自分が覚えやすいように名前の順で割り振った。
「アルとイリーナは食料班ね。みんなの分を集めるのと、周辺の探索もついでに進める感じでいいかな。新しい食料や採取場の開拓ね。道しるべを忘れないように」
二人は頷く。
「ウードとエリンは材料集め。大小さまざまな木と、ここにある干し草の代わりになりそうな葉が長い草があればそれも。アルとイリーナはそんな草を見つけたら報告して。蔓は結構ありそうだったから採ってきて。あと、石もなんだけど、大きい石もあると便利だから二人で運べるサイズのものまでなら持ってきて」
二人が頷く。
「オルガとカナは道具班。さっきの意見があったものとかこれまで作ったもののストックとかを含めて作って」
頷く。
「キラとクミは土器作り担当で・・・・・・・って思ったけど水がないと作れないか・・・・・」
剛がまた考え込む。
「ま、とりあえずキラは材料集めの班で、クミは道具班ね。昼だけど焚火の面倒もよろしく」
二人が頷いた。
「ま、他に必要のことがあるかもしれないけどとりあえずそれで動き出してみようか」
いつの間にか剛の心は持ち直している。
6畳の箱庭から始める建国サバイバル はなか なるき @g5o3
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