第玖夜 消エタ大人
これは私が小学五年生の時の話。
私が通っていた小学校は、六年次にある修学旅行に備え五年生の行事として宿泊学習があった。
自分たちで食料を買いに行って学校に帰ってきて、自分たちでご飯を作って食べる。そして夜はそれぞれ事前に決めていた特別教室に班ごとに寝る。
寝る前にちょっとしたレクリエーションとして、こういった行事に当たり前のように存在する肝試しもあった。
それぞれ懐中電灯を持参して、構内の決められたルートを歩く。
スタート地点は2階にある体育館。体育館から真っ直ぐ行って、まずはパソコン室。
その次3階理科室、音楽室。そして、1階図工室の前を通ってまた2階体育館に戻ってくる。
道中PTAや教師陣が脅かし役として何人かいたりして、まぁ、今考えれば子供騙しの肝試しだった。
私の班は滞りなく進んでいき、というかサクサク進んで行った。
むしろ懐中電灯の灯りを大人たちに向けて、
「そこにいる!」
みたいな感じで進んでいくものだから、大人たちも苦笑いしていたほどだ。
そうして図工室まで無事たどり着いた。
何故か私の通っていた小学校は、図工室に暗幕があって、前後のドアの所と作品展示スペース(?)の所に引かれていたのだ。
その暗幕のところに男の人がいるのを私は見た。
「あ、あそこにも誰かいるー!」
「そこにも○○先生いる!!」
と、他の子達は先生の方を見ていて男の人を見ていなかった。
その時は別段気にせず体育館まで戻った。
時間が余ったとかで、二周目行きたい人ーと先生が言ったので私は行くことにした。
まぁ、やっぱり同じルート、同じ顔ぶれなわけですわな。途中先行していた1周目グループの子達がいて、メンバーの一人が泣いていたりする場面に遭遇したりもしたが、まぁまぁ慰めるのも程々にサクサク進んでいった。
図工室まで来た時、私はふと「あれ?」と思った。
1周目に来た時にいた男がいなかったからだ。
そこにいたはずの男の人がおらず、先生しかいない。
その当時は余り気にもとめず、むしろ忘れてすらいたのだが…。今思うとアレは生身の人間だったのだろうか?
日常怪奇譚 蒼海すばる @sora-aomi_steller0531
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