第撥夜 夢ノ老婆
これは、前話「第漆夜 家」と同じ時間軸の話。
すでに幽霊屋敷と化していた頃。
母はある夜夢を見たと言う。
それは、一人の老婆の夢だった。
その老婆は、妙におどろおどろしい雰囲気だった。
黒づくめの服に、黒の布を顔を隠すように被っている。
そして、妙に血腥い。
母は恐ろしくなって、必死にその老婆から逃げたという。
逃げても逃げても、老婆との距離は変わらない。
次第に近づいてすらあった。
ついに逃げられなくなって、母は今まで感じたことの無い恐怖を味わったと語った。
老婆は母に近づくと二、三何事か告げたと言う。
母曰く
「約束を果たす時が来た」
「娘の命をもらっていく」
というような内容だったそうだ。
母はそこで目が覚め、すぐに両親のところに行った。
そこで母は夢の話を全て話し、そして両親はその老婆の話がどういうものか調べた。
調べた結果、私の母方の祖父の何代か前の先祖に、胸の病…結核を患った人が居たらしい。当時結核は不治の病とされ、隔離し安静にし、死が来るのを待つしかない病だった。
だが、その病を治すために患者の父親は蛇の生き血を用意した。蛇を生きながらに殺し、血を絞る。その血を飲ませ、治そうとした、と。
その患者がどうなったかは私は知らない。知らないが、老婆の言ったことを考えると、患者は助かったのだろう。ただ、何代か後の娘を生贄に。
老婆は蛇の化身か、その時殺された蛇たちの執念のようなものだったのではないか?と母は語っていた。
私の祖父母は必死になって、母を助ける術を調べた。
そして、先祖供養に至った。
過去帳にない名前の先祖を調べ、遡れるだけ遡り、過去帳に記し、毎日供養した。
その後母の夢に老婆は出てこなくなったそうだ。
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