第194話 捜索

扉へ振り向いた純や



何だこの音…?



確かな音を3人は耳にした。



由美「またどっかが崩落を…」



いや…崩落じゃない…



すると 



ドカァァァァァ



新たな爆発音が聞こえ



ドアがガタガタ揺れ、壁時計が床に落下する程の激震



矢口「爆発音?これ…近いですよ」



由美「きゃあ」



由美はコピー機から飛び降り、揺れる室内を見渡した。



純やは廊下へ飛び出し、それに続き矢口と由美も外へと飛び出すや



ドカァァァァァ



3度目の爆発音が鳴り響いてきた。



ギョッとした3人が目を向けた音源



この爆発…



機械室からだ…



途端に機械室の扉が激しく揺れ、バリケードが崩れんばかりに揺れ動いた。



矢口「な…」



中にはハサウェイさんがいる…



由美「何爆発ですかこれ…?」



純や「チィ」



舌打ちする純やがすぐさまバリケードの解体へ動いた。



続いて矢口も解体へ取りかかり、扉が開かれた。



矢口「う…」



開かれた瞬間、吐き出される黒煙に口を押さえる3人



由美「コホ…カハ」



モクモクと充満した黒煙が廊下へと流れ込み、吸い込んでしまったのか由美は数回咳払いした。



硝煙に混じる微かなこの臭い…



ガスか…



この爆発…



ガス爆発…



ハサウェイさんは…?



純やが機械室内へと飛び込んで行った。



由美「まだ駄目 純やさん」



4度目の爆発がないとも限らない



安全の確保がされぬままの進入は危険…な筈なのに…



由美の呼び止めに応じる事無く、純やは煙の中へと消えて行った。



純やの後を追い、動き出す瞬間矢口の腕を掴み制止させる由美



由美「まだ危険です…また爆発が起きるかもしれません」



中から熱風が吹き付け、由美と矢口の頬へと触れた。



規模は不明だがまだ中が燃えてる事は間違いない…



中にはアンデッドだっている…



矢口「でも純やさんが…」



行くのは…



由美「私達に何かあったら上の人達はどうするんですか…?私が行きます 矢口さんはここで待ってて下さい」



矢口「え?」



そして、拳銃を構えた由美が純やを追いかけ、煙りの中へと入って行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



バシャ  バシャバシャ



階段を降下し室内へ足を踏み入れた矢先に、純やは膝下まで浸かる水に足をとられそうになった。



ゴム、ビニールやプラスチック、アルミ製の燃えた臭いが充満する室内を…



純やは足で滞留する水を掻き分け、ハサウェイを探す為、前進した。



ダクトやパイプ、壁には普通に火が立ち込め、様々な機器の表面は黒こげて故障している。



相当な爆発力が伺えるこの爪痕にハサウェイの生死が気になる純や



天井から照らす生き残った非常灯にプカプカ浮かぶ感染者やゾンビの死体が照らされ純やはそれらを目にした。



どの死体も頭が黒こげ…完全沈黙する死体



その浮かぶ死体を手で掻き分け、角を曲がった時



純やは目にした。



何十体もの死体が連なり浮かんでいるのを。



バシャバシャ バシャバシャ



背後から追いかけて来る由美へと振り返った。



由美「ひゃ」



思わず声を出してびっくりする由美へ



純や「奴等がみんな死んでる…」



由美「爆発でですね…もしかしてこいつらを倒す為にハサウェイさんが故意に…?」



純や「かもしれない」



由美「なら無事かも…?ハサウェイさぁ~~ん」



由美が室内へ響き渡らせる程の大声でハサウェイを呼び始めた。



バシャバシャ バシャバシャ



死体を掻き分け前進しながら呼びかける2人



純や「ハサウェイさん ハサウェイさん」



由美「ハサウェイさーん ハサウェイさん」



黒いすすがこびりつく、空調設備区と書かれたプレートを通り抜け、更に奥へ奥へと進んで行く純やと由美



純や「ハサウェイさぁん」



いくら呼びかけても応じない



純や、由美の脳裏にある不安がよぎった。



もしかして…



純や「ハサウェイさぁーん」



この爆発に巻き込まれたんじゃないか…



由美「ハサウェイさーん 無事なら返事してくださぁーい」



死んでしまったんじゃないか…と



そんな拭い切れぬ不安を抱えたままひたすら奥へ奥へと2人は進んで行った。



仰向けで目を見開いたまま浮かぶ死体



うつ伏せで息絶える水死体の間を縫う様に通過して行く



そして由美があるうつ伏せで死する体を通過した時に…



ある1体の死体の五指がピクリと動き始めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



溶けた衛生設備区のプレートを通り過ぎた2人



進む度、機器の損傷が激しく、爆風で壊れて床へと落ちた空調ダクトが見えた。



また、この区域内に入った途端、急に2人は息苦しく、むせかえり、口を腕で押さえた。



逃げ場の無い黒煙が周囲に停滞、充満していたのだ。



また相変わらず通路へ連なり浮かぶ死体の数が増えてきている



丸腰の純やとすぐ背後からカバーする由美がそれを見下ろしながら歩を進めて行った。



この場にハサウェイさんはいないのかも…



脱出を図って無事なのかも…



でも…やはり拭い去れぬ死の文字が頭にちらつく…



疑心が募る純やはそれから電気設備区内へと進入した。



壊れた柵とコンテナ、浮かびながらこちらへ近づくサイレンサーの死体



そして、純やはある物に目をとめ、それを拾い上げた。



由美「これ…ハサウェイさんのじゃ…」



落ちていたのはハサウェイに渡した筈のトランシーバー



ハサウェイさんの身に一体…



何があったんだ…?



益々深まる焦りと不安に捕らわれた2人が熱源設備区内へと入った。



そして…



由美「純やさん…これ…」



純や「あぁ…」



2人は複数のボイラー機本体が大穴を空け損傷しているのを目にした。



微かに立ち込めるこの臭い



間違いない 爆発元はここだ…



純や「これがガス爆発を起こした原因だよ」



由美「こいつらを一気に片付ける為ですね?」



純やと由美は辺りを見渡した。



純や「多分ね…」



由美「ハサウェイさんですよね…これをやったの?」



純や「恐らく」



ボイラーへ近寄り、手掛かりを探す純やの視線にある物が触れた。



純や「これは間違いなくハサウェイさんがやったやつだよ」



純やはボイラーへ突き刺さっていた1本の矢先の1部を発見した。

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感染症 みのるた @minosanminosan

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