第3話 通士虐とお天道様
その日は晴天だった。
自分は、その眩しさに頭を痛みを覚えながら外へ出る。久しぶりの外出だった。ここ一ヶ月ほど仕事を切り詰めていたせいか、体の節々が酷く痛む。今日、こうして外に出なければ、もっと酷くなっていたのだろうか。
二月にしてはのどかな陽気、しかし時節吹く北風が、冬を抜け出していないことを痛感させる。まだ、春は遠そうだ。
自販機で缶コーヒーを買う。仕事終わりの一杯、というやつだ。
お天道様は、ちょうど真上で自分を偉そうに見下ろしている。あまりいい気はしない。自分は見下されるのが丁度いいと思いつつも、やはり実際見下されるのは癪に障る。
また、ひゅうと風がつんざく。冷たさに身が縮こまる。よく見てみれば、あたりに人の気配は少しもない。この時間は、学校か、または仕事か。それにしては、閑散とし過ぎていて、物寂しい。
「つまんねぇな」
一息に飲み干したコーヒーのぬくもりは、喉をとおって体に広がる。けれど、冷めてしまうのは遅くはない。残るのは口の苦味、くらいだろうか。
ここにいるのは自分一人。他は誰もいない。誰一人とていない。お天道様も、見下す人間が一人だけでつまらないんじゃなかろうか。
上を見上げれば、これまた快晴な空。雲ひとつ見当たらない。爛々と、お天道様が輝いているだけ。
大地には自分が一人。
空にはお天道様が一つ。
「……なんだ、自分ら仲間じゃあねえかよ」
あれほど偉そうに踏ん反り返ってるお天道様が、よくよく考えれば自分と同じ一人ぼっち。馬鹿馬鹿しくて笑っちまう。
なあそうだろ、お天道様。お前も自分を見て馬鹿に笑ってるんじゃないか?
自分はてめえを見上げて笑っているぜ。
通士虐という男 一齣 其日 @kizitufood
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