海に出た者、陸に残った者。
この言葉は冒頭と終盤、両方に出てきます。
しかし同じ言葉だというのに、最後のこの言葉が出てきた時、胸がとても詰まりました。
深みと重みと、込められた思い。それらが強く、胸を締め付けてきます。
2383文字という短い……それこそ、一本の煙草を吸っている間に読む事が出来るくらいの短編小説なのに、全くそれが感じられないほど濃いです。
でも詰まっているのに、全然無駄がありません。
青春と一言で表してしまうには泥臭くて重たくて、でも悲しいまでに真っ直ぐ。
そんな登場人物の心情が、この2383文字の間に無駄なく詰められています。
海の青色が目に浮かぶようです。その青色は本来爽やかなはず。
でも最後に出てきた海の色は、どうしようもなくやるせなくて切ないものを呼び起こして、心にとても刺さりました。
鋭くはないのに、ただただ重い。そんな痛みが生じました。