キッチンと人間と、半分になったりんご飴

オノマトペとぺ

第1話


一人じゃ食べきらないから、半分食べてよ。 



そういう君から受け取った半分になったリンゴ飴。

冷蔵庫に押し込んで気づけばもう、4日目。



何気なく手に取ると、袋から滴る赤い結晶。

キッチンの白い床に滲んだ鮮やかすぎる赤。


それはとても綺麗な血痕のようで、途端にそのリンゴ飴はどこか人間臭く感じた。飴に覆われた部分のリンゴはその爽やかな食感と色を留めているが、君が無慈悲に生み出した断面は少し暗い色になっていた。



やはりどこか人間のようだ。



血液がめぐる内はその美しさを保ち、抜かれてしまえば自然の法則に従い崩れていく。リンゴ飴はまるで、人間の中身と外身が入れ替わったもののような、そんな気がした。



とりとめのないことを考えながら、私は赤が溢れるのも構わずに、夏の終りの寂しいキッチンであなたがくれたリンゴ飴をパキリ、シャキリと飲み込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

キッチンと人間と、半分になったりんご飴 オノマトペとぺ @General

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る