作者様からの自薦 4 ~【鬼恋硝子の業結び】~

 年がら年中スコップに励む彼らにも、一応の長期休暇は存在してる。

 ましてや、特に需要の見えにくいスコップ業というものは、その気になればいくらでも休めてしまえるという側面さえあった。


 そんな中、隊員は放り投げたスコップを再び握るかどうかを迷い続ける日々を過ごしている。


「メンドクセー。掘るのも面倒だけど隊長の相手をするのがメンドクセー」


 そうひとりごちる隊員は、普段から散歩道に決めていた商店街を歩きつつ、気まぐれで路地を一本入ってみる事にした。


「雰囲気変わるなあ。商店街の裏ってこうなってたんだな」


 店が全く無いではない。

 だが、お世辞にも繁盛しているとは言い難い様子の寂れた店舗が散見される程度で、賑わいとは程遠い世界が佇んでいた。


「おろ? なんだあの店」


 何故か気になった一つの店舗。

 ガラス越しに見える店内には、奇妙な調度品が所せましと並べられている。


「骨董品かな?」


 歴史好きを自負する隊員は、一目見て店内の様子が気になってしまった。

 徐に引き戸を開けて店内へと足を踏み入れる。


 このご時世、自動ドアでない事すら拘りに見えてしまうほど、店内の調度品は歴史情緒あふれる品々であった。


「茶碗……高そうだな。こっちは扇子か、触れたら怒られそうだな」


 他に、絵画や彫刻等、実に種類豊富な古い物が並べられている。

 西洋風な物から、和風な物、時には素材が何であるのかさえ分からない不思議な物まである。


「それにしても誰もいないのか。不用心だな」


 高そうな品々が並んでいるからこそ、店舗が不用心である事に一抹の違和感がある。

 隊員はしばらく店内を見て回ったが、流石に調度品を買う程の現金を持ち合わせてはいないので、そのまま店を後にしようとした。


 その時であった。


「いらっしゃ。悪いね、奥で作業をしていたんだ」


 その声に、隊員は必要以上に驚きを魅せる。


「え? えええ? 隊長?」

「は? え? なんだ、お前か」


 そこには見慣れた隊長の姿があった。


「隊長、スコッパー辞めて骨董品屋になったんですか?」

「失礼な事を言うな。これはな、スコップしてきた様々な世界で手に入れた戦利品だ」


 隊長の言葉に、隊員はがっくりと項垂れた。


「隊長、それって窃盗ですよ?」


 スコップ先の世界から物品の持ち出しをするには、基本的に特別な許可を必要とする。

 だが例え許可を求めて申請したとしても、調度品の類に許可が出る事はまずあり得ないのだ。


「馬鹿者。譲り受けた物だ!」

「へえ~。じゃあこの絵もですか? これ、前に画廊から持って逃げたやつですよね? どうりで見覚えがあると思ったんですよ。あれは完全に犯罪ですからね!」


 その時、言い合いをする二人の言葉を遮るように店の入り口が開いた。


「異世界管理局遺失物捜査課です。只今より当店舗の立ち入り調査を行います!」


「ヤバイ! 逃げるぞ!」

「は!? ちょっと、隊長!?」


 何故か隊長に腕を引っ張られ、ともに逃げる事になった隊員。

 二人は店の裏口から逃れると、山中に分け入って身をひそめるようにしていた。


「はぁはぁ……隊長、真面目にどうかしてますって!」

「ぜぇぜぇ……何も心配いらん。この先へ進めば異界への入り口がある。この世界ともオサラバしよう」


 何故か笑顔で親指を立てる隊長。


「あのね、心配してるのは身の安全じゃなくて、隊長の頭ですよ!」

「ん? どうした? 俺の頭に角でも生えたか?」


 こうして二人は、かつてのように下らない無駄な会話を応酬しつつ、新たなスコップの旅を始めるのであった。




◆作者様から頂いた自薦作品を紹介します


タイトル:鬼恋硝子の業結び

ジャンル:恋愛

  作者:星霄華様

  話数:34話(現在改稿作業中にて変動あり)

 文字数:100,067文字(現在改稿作業中にて変動あり)

  評価:★12 (2017.2.17現在)

最新評価:2016年11月30日 22:30

 URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054881411766

 検索時:『鬼恋硝子』で検索しましょう。


キャッチコピー

 簪は結ぶ。少女の業を



頂いたお便り(近況ノートより転載)

 突然ですが失礼します。スコップ作品募集中と聞いてやって来ました。


 拙作「鬼恋硝子の業結び」を、よろしければ読んでいただけないでしょうか。十万字超で、恋愛コンテスト応募作品です。

 女子高生を主人公にした、恋愛要素はあっさりめの作品です。普通の恋する女子高生の心理描写と、日本の神話や伝説、信仰や仏教の要素を採り入れて和風の空気を醸すことに注力しました。

 ちなみに、近況ノートに設定についてあれこれ書いてありますので(言い訳集ともいう)、そちらも是非。


 よろしくお願いします。



感想★

 総じて、実に丁寧な文体が特徴的な作品。

 一話目で描かれたガラス細工の描写は実に力作で、女子高生の主人公が美しいガラス細工に心を惹かれる様子が見事に描かれていました。その他の描写も含めて実に丁寧に描かれており、情景を思い浮かべるのに読者の苦労はありません。

 女子高生が主人公という事で、現代の恋愛がテーマ。

 揺れる心や、友人との会話など、色々な意味で青く淡く、それでいて明るい恋愛雰囲気で良かったと思います。




減点理由(がっつり二点★★減点、ごめんなさい)

 よくある「ジャンル詐欺」とは違う、あまり良くない傾向の「ジャンル詐欺」なんじゃないかと思います。

 頂戴したお便りにも記してありましたが『恋愛要素はあっさりめ』との事。

 ちょっとあっさり過ぎるというか、恋愛というテーマの中に山も谷もないと言うか、悪い言い方をすれば退屈な感じが否めません。


 それでも恋愛物としてのクオリティーは存在していて、丁寧な描写を楽しく読み進めていけるわけですが、途中から何やら全然違うジャンルを読んでいる感じになっていきます。

 ネタバレを避けるために詳しくは書きませんが、例えるならこんな感じ。



 和食が食べたくて三段重ねのお弁当を買ってきた。

 一段目は綺麗な飾りが施された中に、新鮮なお刺身が三切れ。

 これを美味しく頂いて二段目を開けると、卵焼きが入っていた。

 これも美味しく頂いた。

 刺身三切れと卵焼きだけで「和食」と言うには、質も量も少々物足りないが、きっと三段目には和食らしい主食が入っているのだろうと期待して、三段目を開けた。


 するとそこには、こってりチーズのピザが一枚と、ミートソースパスタが所狭しと詰め込まれていたのでした。



 こんな感じですかね。

 意外性を通り越して、意外過ぎる。

 奇をてらったのでしょうが、度が過ぎる。

 あまりの高低差に耳がきーんてなる。


 私のように「レビューを目的として読んでいる」人間は最後まで読むでしょう。

 三段目に突如現れたイタリアンに「おおいいね!」と思える人は最後まで読むでしょう。


 ですが、和食を食べようと思っていた人、恋愛小説を読もうと思っていた人にはあまりにも奇抜過ぎだと思います。

 そして、大半の読者が「恋愛小説を読もうと思って」この作品のページを開いたはずであり、そのつもりでページを捲っている筈なんです。


 そうなってくると、読者が抱く感情は「期待外れ」です。


 ですが、お話全体を「そういう物」として読んでいけば、丁寧な描写やしっかりと考察された設定、伏線など、作品全体の仕上がりという意味では良作だと感じます。

 なので尚更、あらすじやジャンルを見直される方が宜しいのではないでしょうか。

 最後にイタリアンがくる展開を知って、初めて作品のページを開いてくれる人もいるんじゃないかと思います。

 意外性よりも、王道ですよ!


 以上、有難う御座いました!

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