作者様からの自薦 3 ~【ラバー・ソウルズ】~
ごろつき共のたまり場。
そう表現する事ができる場所は少なくない。
だが、この日二人が訪れた場所は特に異様だった。
足場がそのまま残った古い建設現場。
郊外型ショッピングモールの建設中に、当該企業が倒産。それによって焦げ付いた不良物件は、いつの頃からか得体のしれない連中が住みかとして利用するようになっていた。
言わば廃墟である。
「隊長、空気がヤバめです」
「ああそうだな。だがここの連中は意外に気さくなのだ」
薄暗い入り口には目つきの悪い連中が蠢き、二人の様子をじっと観察している。
酒や煙草は言うい及ばず、危険な薬までがこの廃墟では当然のように出回っている。その上は、この廃墟に集まっているのは概ね年端も行かない少年少女ばかりなのだ。
「ここまでくると、この場所だけ治外法権って感じですね」
「ああ、カクヨムの法など通用しない。そういう場所だ」
刹那、隊長が隊員を突き飛ばした。
「伏せろっ!」
「ひぎゃ」
反発し合う磁石のように距離をとった二人の間に、カツカツと弓矢が突き立った。
「アハハハ、今日もハズレ」
暗闇から聞こえてきた声は、明らかに若い、いや、少女の声音である。
隊長は一切の動揺を見せることなく、その暗闇へ向けて言葉を投げた。
「シオンか。相変わらずいい腕だな。だが俺を殺すにはまだ早い」
「アハハハ、隊長を殺したらお姉ちゃんが褒めてくれると思うんだよね。でも今日はここまでにしとくー。不意打ち以外には興味がないの」
声はそのまま闇夜に沈んでいく。
「た、隊長、今の子……何なんです?」
「この廃墟の住人さ」
隊長は言いながら、胸ポケットから葉巻を取り出した。
「貴様、両親からの愛を受けて育った自信はあるか?」
隊長の質問に、隊員は少し考えてから頷く。
「ええ、まあ、人並みには。と思います」
その答えに、隊長は「ふっ」と短い笑いを漏らす。
「他人と自分の関係をな、上下でしか図れない連中がいる事を知っているか? 対等な関係という物を理解できない、野性的な生存本能でしか関係性を構築できない連中がいる。それがここの連中さ」
隊長は薄暗い廃墟を見回しながら、一筋の煙を吐き出す。
「隊長、ここで何をしようとしてます?」
隊員は腕組みをして隊長の答えを待った。
「そうだな。『助けたい』などと言えば、それは自意識過剰だろう。俺はこの場所に心を埋める連中を、掘り起こしてやりたい。お前等は立派に光り輝けるんだ、そう教えてやりたい」
そのまま一歩、また一歩と進みだす。
ブーツの硬い靴底が、古びた床にカツカツと響いた。
「俺もな、ここの連中と大差なかったのさ。だが、物語と出会い、自分の物語を紡ぎ、多くの物語を掘り、そして……」
隊長は振り向き、隊員を正面から見つめる。
「そして、貴様と出会った。格好のいい生き方じゃないことくらい分かっている、だがこんな生き方も悪くないと、そう思っている。生きていればいつでも死ねるが、死んでしまってから生きることは出来ん。ここの連中にも物語を届けたい。無様でも生きる事を選んでもらいたい。そう思っているんだ」
隊員は先ほどまで廃墟の雰囲気に怯えていたのが嘘のように、すたすたと歩きだして隊長を追い越した。
「自分、隊長の生き方はカッコイイって思ってますよ。だから着いていく、どこまでも」
「けっ、生意気言いやがる」
こうして二人は、廃墟の少年少女たちに一つの物語を伝えるのであった。
◆作者様から頂いた自薦作品を紹介します
タイトル:ラバー・ソウルズ
ジャンル:現代ドラマ
作者:岩井喬様
話数:9話
文字数:108,823文字
評価:★6 (2016.11.21現在)
最新評価:2016年10月24日 13:03
URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054881912404
検索時:『ラバー』で検索しましょう。
キャッチコピー
ニート大学生、心理的に人助け。お相手は女子高生兼不良ボス!?
頂いたお便り(近況ノートより転載)
こんばんは(^^)岩井喬と申します。
自薦でバッサリ斬っていただきたいものがあります。
『ラバー・ソウルズ』、初投稿作品です。
が、それなりに本気で書きましたので、だからこそ情け容赦なくお願いしたいのです。
お忙しいところとは存じますが、よろしくお願いいたします。
感想★★ (グッと心を鬼にして、一点減点とさせて頂きました)
きました十万字一気読み!
いやあ、良かったですよ。
ちょっとコミカル可笑しい人工AI搭載のアンドロイドと、二浪した大学生が凄い場所で色々な心の葛藤と戦う現代ドラマ。
本気で書いたと仰るだけあって、しっかりと引き付けてくれました。
読む前に★数を気にされる読者さんに申し上げます。読者数を確保しづらい現代ドラマジャンルですから、★数の少ない事はあまりお気になさらなくて大丈夫だと思います。面白いですよ!
寂しさを埋め合う少年少女の心情と、大人たちの身勝手さ、などなど。
楽しめる要素はたっぷり詰め込まれています。
ぜひご一読下さい。
さて、恒例の減点理由です。
★一点:行間を使おう!
ネット小説は行間が多くて読みづらいとか、行間使わないと表現できないとか、低レベルとか、色々と意見はあると思うんです。
行間を効果的に使うとか、そのほうが読みやすいとか、色々と意見があると思うんです。
そういうの全部無視してですね。
私の個人的な意見を、超が付く程自信を持って提言します。
「ネット小説は行間を使え!」
理由を説明します。
ネット小説は、PCであれスマホであれタブレットであれ、画面をスクロールしながら読んでいきます。
それによって、目にしている画面の中で、文章の書いてある位置が変わるのです。
これ、書籍では絶対にありえない現象です。
さっきまで画面の一番下にあった文章が、スクロールすると一番上になる。
ちょっと目を離したらどこら辺だったか分からなくなる。
ちょっと勢いよくスクロールしちゃうと、どこら辺を読んでいたか探すことになる。
だから、行間が必要なんです。
行間があると、何処を読んでいたか見つけやすくなります。見失いづらくなります。
文章の作法とか、書籍化した場合とか、んな事言ってる場合じゃないんですよ。
小さなストレスの積み重ねが、せっかく面白い作品から読者を遠ざけてしまうんです。もったいないでしょ!
ただそれだけです。
文章を読むのが素人な私達は、行間がないと、見失うんです!(笑)
なので、行間を使ってくれるだけで嬉しい。
読みやすくなる。
魅力的な物語を、もっと軽い気持ちで読めるようになるんです。
そしてこの作品に関して言えばですけれど、行間を使う事でもう少しだけ描写に使う手数が増えると思います。
ちょっと読者を置いてけぼりで走っちゃう事が多かったかな。
行間が詰まっているとなかなか気づかないので、行間を作ってじっくり見てみると気付きますよ。
そしてもう一点。
こっちは減点理由としては凄く弱いです。
これだけなら減点にならないくらいの理由です。
ここはちょっと好みの世界になりますが、厳しくぶった斬って欲しいとの事なのであえて申し上げます。
いろいろ軽い。
これは私がおっさんだからかもしれません。
随分とあっさり惚れちまったり、生と死についての会話や、自殺についての会話。
もちろん、二十歳の大学生が会話する設定ではありますけれども、ちょっと軽かったかな。
テーマ性が強いだけに、登場人物たちの台詞が一見重そうに見えて軽いのは、ちょっと残念でした。
以上、二つの理由によって一点減点です!
すごい悩みました。でも、斬りました!(笑)
素敵な作品をご紹介頂いて有難う御座いました!
これからも宜しくお願いします!
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