作者様からの自薦 2 ~【クロス・オーバー! アフター!?】~

 この日、依頼を受けた二人はとある異世界へのスコップに出張していた。

 所謂、異世界チーレム物と呼ばれるその世界は、かつて隊長が訪れた事のある世界であった。


 まだ若かった頃の隊長は一人でこの世界に降り立ち、スコップがてら魔王を退治した。という、前代未聞の勇者となった過去がある。


「久しぶりだな。あまり変わっていない」

「凄いですね。自分、まさか隊長が勇者から転職してワナビになって、そこから挫折してスコッパーになっただなんて、夢にも思っていませんでしたよ」

「逆だ。スコッパーとして勇者になったのだ」


 いつも通りの会話を楽しみながら、二人は最初の町に到着した。


 そこでは、かつて隊長と共に魔王を退治した五人の妖精が出迎えてくれる。

 その妖精達は全て美しい少女の姿である。見た目は人間と大差がない。


「久しぶりね、隊長」


 最初に声をかけたのは、深紅の髪が美しいハネロという名の妖精。

 大地の恵みを司る、大地の妖精だ。


「ああハネロ。久しぶり」


 続いて、緑のショートボブの闊達な妖精が声をかける。


「隊長っ! 元気だった?」


 彼女の名はワービ。

 この町の先にある澄んだ水を湛える渓谷の妖精だ。


 その他三人。

 小麦色の肌が特徴の、この町からは船でしかいけない島の妖精、シマラ。

 露出の多い不思議な巫女装束、和の装いの山の妖精、イチ。

 スリットの隙間から見える足が魅力的な、中華な装いの風の妖精、コチ。


 誰もが実に魅力的で、美しい少女ばかりである。


「めっちゃ可愛いじゃないっすか。隊長、こんな可愛い妖精さんたちと魔王退治したんですか」

「ああ。だが二度と御免だな」



 物思いにふける隊長。


 だが、この世界には隊長の侵入を快く思っていない存在もある。


 そう、かつて敗れた魔王だ。

 そして魔王は、この機を逃さず隊長を討つ準備を整えていた。


 良く晴れた空が唐突に暗転し、周囲は凄まじい魔力に包まれ、上空におよそ人とは思えない存在が舞う。


「馬鹿な……魔王!」


「ふははは、隊長、この時を待っていたぞ! 昔年の恨み、ここで晴らす!」


 一瞬の焦りを覚えた隊長であるが、その焦りは直ぐに振り払う事が出来た。

 かつて共に戦い、魔王を打ち破った仲間がここにいる。


 彼女たちがいれば、負けるような事は無い。


「貴様、あれを倒して勇者になるつもりはないか?」

「え? 自分っすか?」


 隊長は隊員の肩を叩く。


「俺はもう、魔王と戦うような力はない。既にこの世界で使っちまったからな。だが、貴様ならやれる。いや、妖精たちが貴様を勝たせる!」


 隊長の後ろで、五人の妖精が力強く頷いた。

 そして、赤い美しい髪をかき上げるようにして、ハネロが隊員に歩み寄る。


「私達の力を貴方に注ぎます。力とは、私達自身、そう、愛。どうか私達の愛を受け取って、魔王を倒してください!」


「うっしゃあああ! やったるで! 愛でもなんでも受け取るさ! 五人纏めて相手しちゃる! キングサイズのベッドもってこーい!」


 魔王が巨大な魔法を準備し始めた。


「フハハハハ。一撃で沈めてくれる」


 刹那、ハネロが素早く反応した。


「行くよみんな! 私達の愛を、隊員さんに!」

「「「「はい!」」」」


 不意に隊員の体が浮き上がる。


「おおお、なんだこれ、身動きがとれない」

「隊員さん、安心して身をゆだねて! これから私達が愛を注ぐわ。受け取って!」


 ワービの体が輝いた。

 そして、右手に光る何かが出現する。


「私の愛は、ワサビ! 貴方の右のお鼻のお穴に、注入します!」


 ワービの右手に握られた、ワサビのチューブが隊員の右の鼻の穴に突き刺さる。


 続けて、三人の妖精の体が光る。


「私の愛は、島唐辛子! 貴方の左のお鼻のお穴に、注入します!」

「私の愛は、一味唐辛子! 貴方の右のお耳のお穴に、注入します!」

「私の愛は、コチュジャン! 貴方の左のお耳のお穴に、注入します!」


 身動きが取れず、されるがままになっている隊員は、既に気絶寸前である。


 そして、ハネロが舞った。


「私の愛は、ハバネロ! 貴方のその大きなお口に、注入します!」


 最後のチューブが隊員の口にねじ込まれた。


「いくよみんな!」


 ハネロの声を合図に、妖精達五人が祈りを込めた叫びをあげる。


「「「「「苦悶の咆哮!」」」」」


 ハバネロがとどめとなった隊員の表情は、地獄を見たかのような苦悶を浮かべ、そして口から凄まじい魔力が込められた咆哮を発した。

 その咆哮は魔王を貫き、暗くなった空を引き割いて青い正常を取り戻す。


「ば、ばかな……あの時と同じか……人……間……め……」


 かくして魔王は再び退治され、異世界は僅か数秒の混沌の時代を終えたのであった。


「貴様、よくやった。俺が『二度と御免だ』と言った意味が分かっただろう」


 隊長の言葉に、隊員の返事はない。

 既に返事をするだけの気力さえ残っていない状態である。振るえる手で、一枚の紙を手渡すのが精いっぱいであった。


「なんだ? 遺書か? 遺産なら全て俺に残してくれて構わんぞ」


 その紙を受け取った隊長は、それをゆっくりと広げていく。


「ちっ、感想か。まあいい。ゆっくり休めよ」


 こうしてまた、新たな感想が生まれたのであった。





◆作者様から頂いた自薦作品を紹介します


タイトル:クロス・オーバー! アフター!?

ジャンル:恋愛・ラブコメ

  作者:緑川 赤城様

  話数:14話

 文字数:46,490文字

  評価:★22 (2016.11.21現在)

最新評価:2016年9月18日 06:58

 URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054881031857

 検索時:『アフター』で検索しましょう。ヒットが難しいタイトルでした(汗


キャッチコピー

 最終回。は終わりじゃなかった


頂いたお便り(近況ノートより転載)

 緑川赤城と申します。こういう企画をちょうど探していたところ巡り会えたのでウチの子を読んで頂こうと思います。


「クロス・オーバー! アフター!?」

46000文字程度で全十三話、巻末に設定集が付いてきてお値段⭐️22。

ジャンルはラブコメで二次創作風味な作風です。

よければ是非ウチの子をよろしくお願いします!



感想★★ (悩んだ結果、一点減点とさせて頂きました)

 架空の人気チーレムラノベ「クロス・オーバー」のスピンオフとでも言いましょうか、そもそもその「クロス・オーバー!アフター!?」のタイトルが示す通り、物語が終わった後のストーリーを描いた作品です。

 ウィキペディアちっくとでも言いましょうか、時折どこかで見慣れたような面白い解説が入り、演出として雰囲気を盛り立ててくれています。


 アイデア勝負と囁かれるネット小説の中では、なかなか面白い着眼点。

 こんな形で作品を仕上げていくという手法に、新たな発見をさせて頂いたという感じです。


 設定集を見る限り、本編の方を作ってもいいんじゃないかと思える完成度でした。


 ぜひご一読下さい。




 以下、一点の減点理由です。


★一点:奇を衒ったが故でしょうか、その「奇」に相応しい中身を用意できなかった事。


 段落が気になったのですが、作者様の他の作品を拝見したらしっかりと出来ていたので、ここは減点理由にしていません。


 減点理由は、商品力です。


 発想は秀逸、着眼点は実に面白い。


 そこで期待値がグッと上がってしまったせいもあり、ストーリー(商品力)があまりにも貧弱に感じられてしまうのが難点でした。

 読了後、私は何を想うべきだったのでしょうか。


 よかったね! なのか。

 切ないね…… なのか。

 凄い楽しかった! なのか。

 まだ続きが見たい! なのか。


 そういった読後感が薄い内容なってしまっていたのが、とても残念。


 実際に「クロス・オーバー」が存在し、そのファンが読者であればそれも良かったのかもしれません。まあそういう設定なので、ネタとしてはそれでいいような気もするんですけどね。(笑)


 ただ、これを単品で打ち出すからには、この作品に何かしらの読後感は持たせるべきだったと思うのです。


 商品力をとやかく言うつもりはなかったのですが、その点がどうにも納得感が持てず、心苦しくはありますが一点減点とさせて頂きました。


 素敵な作品を紹介して頂き、有難う御座いました!

 これからも宜しくお願いします!

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