作者の下調べが十分に生きている。
表現される平安の街並みはリアリティがあり、当時の華々しさとその裏にある苦しさをしっかりと描いている。
主人公は境遇からか多少歪んだものの受け取り方をする性格だが、周りの人々からの想いが芯を曲げずにいる所に好感を覚える。
また、主人公だけでなく他の人物の描写がしっかりできているので、とても「生きた」物語として仕上がっているのではないだろうか。
作者はアクションに定評があるのだが、今作は人物の有り様が生き生きと描き出され、物語全体の読み応えをより高めている。
常日頃から期待を持って追っている作者だが、本当にレベルアップの著しい方だと再認識する。
とりあえず、読めばいいと思う。
この作品の魅力は様々にあるので私の言葉であなたの受け取り様を決めてしまいたくない。
フラットな気持ちで、是非、没入感を味わってほしい。
平安の京で起きた1つの事件と、その結末を見届け、この奇譚を記したのはあなたかもしれない。