ぼくはことりとすんでいる

紅牙

ぼくはことりとすんでいる




―ぼくはことりとすんでいる。




 ことりはぼくよりも早く起きて、どこかに散歩に出かける。ことりにはきちんと「外で粗相をしてはいけない」と躾をしているから、ことりはちゃんと外ではいい子にしてる。



 ぼくはことりが出かけたのを見送ってから、いつも仕事に出かける。ことりがぼくのいない間に帰ってきても、ちゃんと部屋にはいれるようにはしているから、安心だ。



 ことりは近所の人達に愛されてて、いろんなものを貰うらしい。その話を聞くたび、家の中じゃいい加減なのにな、って笑ってしまう。



 帰ってくると、ことりが機嫌よさそうに囀りながら、外でつかまえたものを食べている。ああ、床がべちょべちょじゃないか、外ではあんなにいい子にしてるのに、家ではこれだよ。



「床を汚すなっていつも言ってるじゃないか」



 テレビをつけながらことりにそう注意すると、ふん、と顔を背けられた。こんの……。



 テレビでは近所のニュースを取り上げてるようだ。顔にモザイクを入れられた女性が涙声で何かを訴えてる。特に気をひかれなかったから、チャンネルを変えた。こっちはバラエティーのようだ。公園でのロケのようで、にぎやかな声が聞こえてくる。ことりがそっちを向いた。じぃ、と公園のVTRを見ている。



「今度この公園、行ってみるか?」



 尋ねると、元気な返事が返ってきた。それじゃ、次の休日にでも行ってみるかな、と予定を頭の中で立てる。



 べちょ、と足元で音がした。ああ、ことりの食べ残しか……つかまえたものはちゃんと食べきってほしい。次に言い聞かせるのはここだな。



 ことりは公園のVTRに夢中だ。もうつかまえてきたものに興味はないらしい。おいおい……。



 呆れながら、ぼくはことりが残したものをかき集めて、新聞で丁寧に包んで、ごみ袋にしっかりと詰めてゴミ部屋に放り込んだ。次のゴミの日っていつだっけ。結構たまってきてるけど、一度に出せる量は限られてるからなぁ。



 ことりは相変わらず、公園のほのぼのとしたVTRを見つめている。親子とタレントが楽しそうに遊んでいるそれを。



 そして、何かを見つけたのか、目を輝かせた。



 テレビのなかのそれを指さして、俺を見る。









「あれ、ほしい」







 





 あーはいはい、次はそれね。









―ぼくは [ことり] と すんでいる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ぼくはことりとすんでいる 紅牙 @deemo_fate

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ