the last scene 雪の中にて

メイド「怖い、ですか?」


若「いいや。ただもう少しだけ、君と二人でのんびりしていたかったと思うよ。君はどうだい?」


メイド「わたくしも、もう少しゆっくりしたかったと思いますわ。ただ、怖くはありません」


若「そうか」


メイド「ええ」


若「……」


メイド「……」


若「そろそろ行こうか?」


メイド「はい、若様」


若「ああ、その、呼び方のことなんだけれど――『若様』っているのはもうやめにしないか?」


青年は、気恥ずかしげに、彼女の名前を呼んだ。


彼女はふいを突かれて驚いたように目を丸くしたが、ちょっと笑って、はにかみながら、ただ彼の名を呼んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

只の主従は世界を変えられない 真散田 @rerico

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ