scene6 冬が終われば
若「僕は、君を幸せにしたいと思っている。これから、君と」
メイド「あらいやだ、若様。わたくしは、今が幸せなら、それでいいんです。未来のことなんて、考えるのやめましょう」
若「ま、それもそうだな。なるようにしかならないものだし」
メイド「今、この時を大切にしましょう」
若「せっかく二人きりになれたんだからな」
メイド「その通りですわ、誰も、邪魔に入らないところまできたんですもの」
若「そうだね、こんな雪ばかりしかない、寂しいところだけど」
メイド「本当に、見渡す限りの雪景色ですわね。始まりの場所にふさわしいとお思いにならなくて?」
若「始まりの場所、か。冬が始まりというのはいいことかもね。やがて来る春を待ちわびることができる」
メイド「季節は、誰に頼まれずとも巡っていきますものね。始まりも終わりも、似たようなものですわ。表裏一体で、何かが終ると、何かが始まって。そういうことの繰り返しなのでしょうね」
若「そしてこの世は回っていくんだな。僕等二人の進退なんて、全体からしてみれば大したことないことなんだろうね」
メイド「ええ。仰る通りですわ。冬が終われば春が来て、夏が来て、秋が来る。そしてまた冬がやって来る。それだけのことなのに、人間って物事を難しく考えすぎなのかもしれないですわね。若様」
若「僕達も、もっと簡単に生きられたら良かったね。気軽に他愛のない話をして、好きなところに出かけて、自由生きられたら」
メイド「若様、もうそれは言わない約束ですわよ」
若「ああそうだね、悪かった。やっぱりすこし感傷的になっているのかな」
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