第51話 おまけ ニーハイソックス誕生秘話

――おまけのお話「ニーハイソックス誕生秘話」

 長髪の男は今日もキーボードに向かう。

 一心不乱に。


「ククク......」


 男から不気味な笑みがこぼれる。いつものことだが、彼は知らない。彼のデスクの両端には衝立が置かれていることを。


 ここは、あるソフトウェア会社のオフィスである。男は深夜にも関わらず血走った目であいも変わらずキーボードを叩いている。


<ぺったん、ハアハア>


 送信。


 彼は時折ぺったんとキーボードで叩きながら、プログラムを組み上げる。


「ククク......」


 男が再度笑い声を上げたとき、声をかける若い社員がいた。


「和田さん、今度のイベントどうしますか?」


「ククク......すでに準備は万端だ。問題ない。田中くん、ドラゴンバスターに足らないものは何かわかるかね?」


 引きつった顔を浮かべながら、田中と呼ばれた若い社員は思案にふける。

 考え中の彼を無視して和田は半ば独白するように、語り始めるのだった。


「ドラゴンバスターでは様々な服装を作成できる。が、しかし狩りの際には使われない」


「そうですね。防御力ないですものね」


「ああ、あれだけバリエーションがあるのに、使われない。せっかくの狩りに勿体無いとは思わないかね?」


「なるほど。防具にバリエーションを追加するんですか?」


 見当違いな言葉を呟いた田中に、和田は声を荒らげて、


「違う! 違うんだ! 田中君。逆だよ。服に防御力をつけるんだ。そこで俺はあるシステムを開発した」


 和田が作成したシステムとは、よく一人で作り上げたと驚嘆する内容だった。

 「魔の森」システムと言われるそれは、これまでのボスシステムと全く違う仕組みが導入されていた。

 「木を切ることでボスが出現するシステム」簡単に言えばこれだけなのだが、実際に作るとなると一週間やそこらで作りきれるものではない。

 ずっと会社に篭っていると思っていたが、何が彼をそこまで駆り立てるのだろう。田中は和田の狂気を見た気がして背筋がひやりとする。


「このシステムを使う。報酬にニーハイソックスを出そう」


 「なるほど」と田中は思う。ニーハイソックスは色のバリエーションも多く、服装の組み合わせもやりやすいため、人気のアイテムだ。


「こいつを出すボスも作成済みだ。周知してくれ」


「分かりました」


 田中は課長へ相談を行いに、席へ戻っていった。


「ククク......簡単には取らせない。俺のニーハイソックスはな」


 この高難易度のボスを狩り続けれるのは極一部だ。しかも出現率を極端に落としておいた。ニーハイソックスを愛するなら挑戦するがいい。

 ガバっと長い髪をかきあげ、和田はキーボードを叩き始める。


<リベールたん、ニーハイ、はあはあ>


 和田の狂気はあるプレイヤーに感染したのか、一心不乱にニーハイソックスを集めるプレイヤーが後に出たという。


※本編の和田さんからの妄想です。あくまで妄想です。

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ネトゲをマクロで俺つえええしたかっただけなんだ......(勘違いギャグ) うみ @Umi12345

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