あとがき

 こんにちは。


「道は続いてくどこまでも・・・」をお読みくださりありがとうございます。


 作者の夢蜻蛉(ゆめかげろう)です。


 ここまでお読みいただいた皆様なら恐らくお分かりの事と思いますが、実はこれ、現代風の「怪異譚」です。書き上げたとき、私も正直ジャンル選定に迷いましたが、一応カクヨムの定義に従えば、どうもSFらしいという形で落ち着きました。


 現代風ドラマ?うーん、一応不思議なものも出てくるし・・・


 現代風ファンタジー?いや、そんな大層な能力でもないし、派手なバトルも英雄も出てきません。


 怪異というものは時代によってその役割が変わります。例えば神話の時代のいわゆる「怪異」は、天災規模のものでした。有名どころで言うと「ヤマタノオロチ」でしょうかね。でも今の時代は、その役割は薄れ、ほぼなくなってしまっています。


 もはや暗闇に怯える時代ではなくなりました。というわけで、役割を終えたものたちは少しずつ忘れ去られるか、カタチだけを残して過ぎ去ります。


 いや、電脳世界には沢山いるか・・・ワールドワイドのものまでいるかも・・・


 さて、では何故、こんなものを私が書いてみようと思ったのかと言いますと、実は休日にたまたま立ち寄った歴史民俗資料館で、とある雑誌が無料で配られていたことに起因します。何でも、随分前に廃刊になり、今は誰も継ぐ者が居ないので、少しでも知ってもらおうとタダで配っているとのこと。


 その名も『美濃民俗』


 かなり長く続いた雑誌らしく、一気に配ることは無理とのことで、毎月少しずつ配っていると言う事でした。その月から毎月、その資料館に通い、いただけるものは全て揃えました。


 実は私、ITエンジニアです。だからこういったものとは無縁に思われがちですが、情報技術と言うものは何も新しいものではありません。


「どのようにものを伝えるべきか?」は、ひとが長い歴史の中で培ってきた技術でもあります。民間の伝承なんかもその類です。


 その意味では、プログラミング技術は現代における呪術のようなものです。如何に情報を組織化するか。その意味において、古い呪術は捨てられ、新しいものに変わっていったとも言えるでしょう。


 ただ、そこには「あそび」がありません。1か0で構成された情報伝達手段は「あちらとこちら」を鋭く隔ててしまいます。


 行き過ぎた業務効率化は人からゆとりを奪っていきます。細分化された情報は、「あいだ」を狭めていき、遊び心すら効率化の波にさらわれていきます。


 この事がきっかけで私も仕事の在り方を変えました。


 やってみたかったことをやろうと思ったのです。


 つまり起業したわけです。元々IT何でも屋みたいなことをやっていましたから、もう少し「やわらかい」ITがないものかと思い今も会社を続けています。


 もう一つ考えたのは小説を書くことです。


 私は小説の役割と言うものは、硬質な理屈で語れない部分を語るものだと思っています。言ってしまえば「無責任さ」こそ最大の特徴です。学術論文じゃないから「大体でいいじゃない」と、そういうものでこの怪異の「今」を語ってみたらどうなるかを考えたわけです。そう思って久しぶりに筆を執ってみました。


 舞台のモデルとなった歴史民俗資料館のまわりには、私の原風景のようなものが広がっていました。そこを舞台に小説を描くとどんなものが出来上がるだろうと思った時、彼らがフワッと浮き上がってきました。


 そうして出来上がったのが、この「道は続いていくどこまでも・・・」になります。


 プロット自体は2016年に出来上がっていましたが、もうひとつの方がやはり大変でなかなか書けずにいました。だから、ちょっとずつ思った時に書き溜めていった形になります。


 書くに当たって、色んな制約を課していたので難しかったこともあります。


 例えば、舞台は、その民俗資料館周辺のみで行われること。現代風に「怪異」を語らなければならないので、ITや人工知能、宇宙と言った現代のテーマを扱いつつも、民俗学的な要素を交える事。


 中山道ですから「道」をテーマにする事など・・・


 幸い、舞台となった大垣市青墓町は「小栗判官と照手姫」という、人形浄瑠璃にもなった有名な復活譚の舞台でもあります。なので、これを手ほどきに「死と復活」をテーマとして現代風の怪異譚を綴ってみようと思いました。


 Oguri1号の起動は現代風の呪術で、そして仕上げは・・・って感じです。


 他にも様々な制約を課しました。基本的に、昔ノートに小説を書いていた時には「絶対にやらなかったタブー」というものをいくつか破って書きました。


 テイストとしては、文学とライトノベルが半々程度。あとはSFと民俗学的な怪異譚を交えたストーリーと言う、まぁ何とも変なものを考えたものだと我ながら思います。


 まだ表現上、調整は必要ですが、一応これにてひと段落。


 いくつか集めたローカルな怪異譚もありますから、あとはこの世界観の中で、それらを綴っていくくらいかな。


 この10年後というものも考えていますが、まぁコロナが蔓延する中、書きにくいったらありゃしない。この5,6年の間に、人工知能や物理学を取り巻く状況も随分変わりつつありますので、やるなら勉強しなおしです。


 今回、これを仕上げてみようと思ったのは、そろそろもうひとつの方に本腰を入れるときが来たと思ったからです。ひとつのけじめとして書き終えたという形です。今やらないと書けないだろうと思ったからです。


 と言うわけで、このわけのわからないものを、ここまで読んでいただいた方には感謝いたします。


 それではまた、いつかどこかで・・・


 暫く読み専かな

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道は続いていくどこまでも・・・(日にちによる分割) 夢蜻蛉 @yumekagerou

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