寸足らずのカーテン
ハルスカ
寸足らずのカーテン
21時32分。バスは定刻通り停留所を過ぎた。
秋の匂いがする。秋の匂いは、冬の訪れをぽっかりと暗闇に落としたようで少し淋しい。
左側だけに並ぶ街灯。照らしているのは、アスファルトの道だろうか。それは私の道だろうか。
家々の灯りはぼんやりと夜に溶け込んでいた。
あの人の家のカーテンは、ほんの少し短い。
閉じたネイビーカラーの下からすーっと光がのびて、家主の在宅を報せる。
あの光のさきにはデスクに向かって、少しフレームの合わない眼鏡を直す彼が居るんだろうな。きっと洗濯物も干しっぱなしで。
一瞬だけ、何気なく視線をずらした程度の間隙で、世界のはじっこまで辿り着く想像をする。
ひとつひとつ終わりを確かめて、ここに戻ってくる。
目を閉じて、ふたたび開けたその時には、アスファルトが光る街灯の下をしっかり歩けるように。
寸足らずのカーテン ハルスカ @afm41x
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