第8話 気持ち?んなもんは必要無いね。要るのは体とそれを動かす脳だけだ。

「おぉ、ようやく帰って来たの。どうじゃった………のぅ、お主は誰かのぅ?そして、千歳は何処へおるのじゃ?」

「…………………………え?」

いきなり陛下に誰何された。

「しょうがないわよ。ですよね?エミリア様?」

「………えぇ。私だってわかりません。一発で分かるのは初瀬様位ですもの。」

「エミリア様。ご覧下さいよ。陛下のお付きの騎士の皆様方が思わず兜を外して目を擦ってますよ。」

「………そうですね。こんな可愛らしいは誰だって思わず二度見してしまいますよ。」

この二人は二人でニヤニヤしながら…………いや違ったわ。片方がニヤニヤして、もう一人は無表情だったよ、で、勝手に話を進めている。

「のぅ、初瀬とエミリアよ。もう一度聞くが、この娘は何者じゃ?そしてこの娘は何故初瀬と同じ服を着ておるのかの?」

「えっと、おrムグッ…。」

陛下が困惑してるから、説明しようとしたら初瀬に口を塞がれた。何すんだ。

「駄目じゃないですか。が口答えを許されている身分でないのは今までの人生で良くご存知でしょう?……………すみません、陛下。この娘まだこういうのに慣れていませんのでご容赦下さい。そして街で不良がこの娘に絡んでいた時、丁度通りかかった私達にまで手を出そうとしてきたので、追っ払うと同時にこの娘をしました。」

「おぉ、そうかそうか。で、千歳はどうしたのじゃ?」

「モゴモゴモゴモゴ‼」

「さっき言ったばかりじゃない。静かにしなさいよ。」

「………ええと、千歳様なら体調が急に悪くなったと仰って自室にてお休みになられてますよ。」

「おぉ、そうか。では初瀬よ、この者の名は何じゃ?」

「えっとですね……ぇーと……。」

「えーと?」

「ぇ、ええ。あっ、そう!コ○ン・エドガワって言うそうです。」

「テメェ俺を見た目小学生の人間・猟奇殺人製造機に仕立て上げてんじゃねぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」

「⁉」

「………⁉」

「ちょっ。」

思わず初瀬の手をおもいっきり払いのけ、叫んじゃったよ。でもなんとしてでもあれと同じ名前は避けねば。

てか名前の設定考えてなかったのかよ。

あ、後、これ以上初瀬の茶番に合わせたくなかったのもある。

「いきなり驚かせるでないのじゃ。というか、その声は千歳かのぅ?」

「はい、その通りです陛下。例えこんな格好をさせられようとも俺は千歳です。」

「そうかそうか。で、何故そんな格好をしておるのじゃ?」

いつも通りの威厳に満ちた表情でこちらを見てくる陛下。…ん?でもよく見れば目が笑ってる。

「えっとですね、それは……かくかくしかじか長くなるから省略でして…。」

説明が終わるのに10分かかった。

すると、




「はっはっはっはっ………………ははっ、それは大変じゃったなぁ…はっはっはっ。」

即席☆爆笑が止められない40代後半の男性一人の出来上がり‼


……………自分で言っててめっちゃ悲しいわ。


「はっはっはっはっ……ははは、して千歳よ。その格好はいつまでするつもりじゃ?」

「自室に戻り次第着替えます………って陛下?その表情はなんですか?」

「いやぁ…のぅ、そんなにのんびりしてて良いのかのぅ、とな。」

「すみません。どういう事ですか?」

「あののぅ、千歳らも良く知る人物でな、両刀使いがおってな。其奴曰く、『その中でも一番良いのは、女装した少年です。見た目は女性と事をなす様に見えるのに、実態は男同士という背徳感が堪らないのです。ハァハァハァ。』とか言っておってのぅ。…お?噂をすれば何…」

「すぐに隠れさせて下さい‼」

どう考えてもテミストレオ騎士団長しかいない。

「わかった。3人ともそこの後宮に繋がる通路に隠れておるのじゃ。足音を立てない様に気を付けるのじゃぞ。」

「はい、ありがとうごさいます。」

大急ぎで、かつ静かに三人で陛下の横を通り過ぎる。


俺が謁見する側から見えなくなる位置まで競歩で行った時、

「あ、そこらへんはちと壊れておっての、足場が悪いから気を付けるのじゃぞ。」

「え?」

立ち止まろうとしたのが悪かった。

「うわぁぁああ⁉」

丁度壊れている所を通ったらしくバランスを崩して後ろへ仰け反ってしまった。

「ちょっと‼」

慌てて振り向いた初瀬が俺の左腕を掴んで全力で引き戻そうとしてくれた。ありがとう初瀬。

反射的に初瀬の腕を握りかえす。

でも─────

「いてて…ぇぇ⁉」

初瀬もあまりに焦っていたのだろう。

俺は勢い余って前に飛び出してしまった。

………初瀬の腕を握ったまま。

「きゃっ。」

しかし俺も止まれない。

そのままの勢いで前のめりになって、

「ムギュッ⁉」

「………っきゃあ‼」

何か柔らかいものに頭がぶつかり、

そのまま押し倒した。

次の瞬間、後頭部にも今さっき程じゃないけど柔らかい衝撃が。

言ったばかりなんなんだ?

そ、それより……呼吸が出来ない。

ひ、ひひあぁい、息がぁ…。」

窒息死しそうだけど、頑張って息を吸う。

なんでだろう?とっても甘い良い香りがするよ。

「………っく、くすぐっぅ⁉」

謁見の間の大きな扉が開く音がした。

直後、頭上で拍手の様な音もした。

何か柔らかいもので音がくぐもって上手く聞き取れないけど、多分エミリア様の口を初瀬がふさいだのだろう。


何か会話が聞こえてくる。なになに?


「……テミストレオよ、何かあったのか?」

「はっ、リッジョ・エミリア城から南西へ20㎞、本城から東北東に35㎞の地点辺りに特級魔獣のキマエラが発生しました。」

「それは冒険者に任せて置けばよかろう。」

「一応、特級以上は国に報告する決まりですし…ご了承下さい。陛下だって、特級以上の魔獣討伐報酬であっても用途を聞かずに予算が減るのはよろしくない事でしょう?」

「…ま、それもそうだな。その件に関しては了解したぞ。」

「で、それとは別件なのですが…」

「ん?なんじゃ?」

「…あの、私の大好物な女装男子がいる臭いがこの城でするのですが……‼」

「そそそれは気のせいじゃろう。いくら使のお主とて考えすぎじゃ。いや、今回は感じ過ぎになるのかの?」

「……そうですか…。わかりました。これにて失礼致します。…………………私が女装男子がいる事をかぎわけれなかった事は今まで無いのに………。」

何か言ってた気がするけど、良く聞き取れなかった。

少ししたら、扉がゆっくり閉まる音がした。

「助かったわね。」

「っぷっはあ‼死ぬかと思ったよ。後初瀬、引き揚げてくれてありがとうだけど肩が痛い。」

「それはこっちの台詞よ。いつまで私の腕を掴んでるのよ。」

「え?あ、ごめん。」

どうもこけかけた時から掴みっぱなしだったらしい。

「………千歳様?いい加減私の上から降りて下さいませんか?昼間から殿方に押し倒されるのは恥ずかしいのですが。」

「え⁉うそぉ⁉」

慌てて起き上がる俺。

俺が突っ込んだところをみたら、くっきりと人の頭があったとわかるような服の乱れ具合だった。

「す、すみませんでしたっ!」

「………千歳様。貴方のせいで私は貞操が汚されました。責任をとって下さいね。」

「貞操の範囲が厳しくないですか⁉」

起き上がってすぐに土下座へ移行したものの、エミリア様の台辞に思わず跳ね起きた。


───直後、


「ちいぃぃぃぃぃとおぉぉぉぉぉぉせええぇぇぇぇぇぇ⁉」

地獄の釜初瀬の口が開いた。


「いたいたいたいたいたいたいたいたいいぃぃいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ‼‼‼⁉」

「私の体をまさぐっておきながら、あまつさえエミリア様にまで手をだしたわねえぇぇぇぇぇぇ⁉⁉」

待って、それどうも時系列逆な上にまさぐってないからね⁉

でもそれ以上に痛い痛い痛い‼‼

腕が!腕がぁ‼

初瀬何でこんなに自然に関節技が極められるの⁉

って、今俺を極めてるの髪の毛だし‼どうやって⁉

水属性の魔術といい、今回の髪の毛といい、初瀬はメドゥーサ好きだなぁおい!


いやそんなことより‼

助けを求めねば‼


「すみません国王陛下、お助け下さいお願い申し上げます‼痛いんです‼」

慌てて頼み込んでみたは良いものの、


「はっはっはっはっ、中々賑やかじゃな。こうして見てる分には、千歳には女難の相でもあるのかのぅ?今度占者でも呼んで卜わせてみようぞ!」

陛下は完全にこちらの状況を眺めて楽しむだけで、助けるつもりは無さそうだ。


「………あ、千歳様?言い忘れてましたが、先程のは冗談ですよ?」

「全然冗談に聞こえないいぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいたああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあああいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」






──────凡そ30分後、拷問をかけ続ける初瀬、それを見て無表情で追い討ちをかけるエミリア様、すぐ近くで起こるカオスな光景に爆笑する国王陛下。


そんなメンバーの地獄からやっと解放された俺は、

日中の疲れも相まって、その後更に1時間動けず、床に突っ伏していた。

























深夜、執務室にて───



「………以上が今日の彼らの行動に関する報告です。」

「…」

国王専用の執務室には、淡々とした声だけが響いていた。


「………では、私はこれにて失礼致します。」

「…のぅ、エミリアよ。少し待たれぃ。」

「………なんでしょう?私はまだ印を押さなければならない書類が沢山あるのですが。」

「ならば命令じゃ。この間に留まり、ワシの質問に答えよ。」

「………わかりました。」

「何故ワシに毎晩こうして報告して来るのじゃ?」

「………あの勇者2名が寝返らないかどうかを監視し、万が一我が王家に仇なす場合、その前に芽を摘み取るようお父様直々にご命令を賜ったのではないですか。」

「…成る程、そうとっておったか。」

「………違うのですか?」

「何故ワシがそう命じなければならんのじゃ?」

「………今まで行動から、あの2人が能天気で何も考えていないことだけはわかっていますけど、それら自体が演技である可能性も否めません。彼らが我が国の密偵のように信用出来ない上に、私達の常識を持たない異世界人である以上、私のような王家の者が付きっきりでそのつその都度我々で軌道修正した方が良いと判断なさったのでは?」

「確かにエミリア、お主の言う通りあの2人は我らの様に常日頃から自身の言動が後々どう影響するかを考えておらん。いや、少し違うのぅ。相手の顔色のみを伺って、場当たり的な行動ばかりしておる。まぁ、そういう平和ボケした世界で暮らして来たのじゃろうな。それが今置かれている状況に適しておらぬ事に、今の所気付いてはおらぬのぅ。」

「………でしたら‼」

「まぁ、話は最後迄聞くものじゃぞエミリアよ。あの2人は権力争いが絶えない状況には向いておらん、。じゃがな、頭の回転も悪いとは言っておらん。例え今は適しておらんでも、いずれかは適応することもできよう。」

「………それなら、最初から適しているのを用いた方が良いのでは?」

「そういう連中はそもそも寄り付かぬ。じゃからこそ、一から育てんといかん。そこで、エミリア。お主が必要なのじゃ。」

「………私がですか?」

「そうじゃ。今の所、我が国には我らに表立って反対する勢力はおらぬ。しかし、いつ寝首をかきに来るかもわからぬ。例えば、あの2人と下手に接点を持たせてみよ。色々と吹き込まれて王家打倒の急先鋒になりかねん。そういったことにさせぬ為にも、お主が側におることであの2人を守っておいて欲しいのじゃ。」

「言い方が少し異なるだけで、私が申し上げたことと変わらない様に思えますけど?」

「いや、大いに違っておるぞ。少なくとも、エミリアが考えていることではないからのう。今後は彼らの持つ異世界の知識だけでも我が国をより栄えさせる力があるじゃろう。エミリア、お主がすべき事は彼らが今持っている心根が変わらぬ様に、守ってやっておくのじゃ。お主の役割は暗殺者でも美人局つつもたせでもない。今のうちは、この世界の案内人じゃ。じゃから彼らの行動を逐一報告する必要はない、いやするな!よいな?」

「……お父様は幼い頃の私に自身の未来は自助努力で切り開くものだ、と仰いましたがこれでは他力本願ではありませんか?」

「その後こうも言っておるのじゃが忘れたかのぅ?どんなに自助努力でも望んだ将来を手に入れられない時はある。自分の行動のみがこの世に影響する訳ではないからのぅ。だが、そこでしてはいかんのが、多少しただけですぐに限界だと諦めることじゃ、とな。例えば、今回の場合じゃと、ワシやお主が代わりに勇者はできるかのぅ?いや、できん。同様に、今の現状で我が国の民で勇者の役割をできる者はおらん。そして、頭が切れる者ならば薄々感付いておるがの、我が国を含め魔王の軍門に下っておらぬ14ヵ国は、今の体制のままでは生き残ることはできぬじゃろう。昔平和と言う名の半永久的な停滞を望んだからの、どの国の体制も限界じゃ。じゃから、そろそろ新しい風を入れるべきなのじゃ。あの2人はこの世界の常識や慣習を持ち合わせておらぬ。ワシらがある程度環境を整えれば、必ず変えてくれよう。あの2人の好きなようにさせよ。よいな?」

「………。………仰ることの意味がわかりません。」

「今はわからんでも良い。要は貴族を近寄らせなければ良いのじゃ。」

「………納得できませんが、了解しました。では、今度こそ失礼致します。」


執務室の扉が閉まった後、そこにはただペンを走らせる音だけが響いていた。
























━翌日━

朝食を食べている時、ミレーナさんが予定について話し始めた。

「御屋形様方、今日以降の予定についてお話させていただきます。」

曰く、俺の要望第1話参照の準備が錬金術以外は整ったらしく、今日から日替わりで説明を聞きに行く事になるそうだ。そして、それが一通り終わったら、今後は1月交代で研修をするって形らしい。

「その間、初瀬様は魔術と、治療院にて治癒術の訓練を主にさせていただきます。宜しいでしょうか?」

「ええ、大丈夫よ。」

「あ、初瀬。無詠唱はつかうなよ?」

「何故かしら?」

「威力が出ない以上、威力がある方法を知っておいた方が良いでしょ?」

基礎から学ぶって点でも重要だしね。

「わかったわ。それで練習をしとくわ。」

「宜しく。」

「では、千歳様。今日は鍛冶の方へと参ります。先方より、動き易い服装で、と言われておりますのでこちらを御召し下さい。」

そう言って渡されたのは、作業服ツナギ。頑丈さは地球の物と変わらなさそうけど、生地が固くて少し着にくい。


30分後、城下の鍛冶屋に着くと、

「では、夕刻に迎えに上がりますので、これにて失礼致します。」

ミレーナさんはさっさと帰って行った。

それはそれで少し寂しい感じのだが、向こうも忙しそうだから仕方ない。

こちらも動くとするか。

「すみませーん。どなたかいらっしゃいますかー?」

返事がない。よし、もう一回。

「すみませーん。どなたかいらっしゃいませんかー?」

またか。

「…返事がない。まるで屍の様だ。」

「なんでぇ!!人を勝手にかばねにしてんじゃねぇ!!この野郎!!」

やっとこさお店の人が出てきた。御多分に漏れずこれまたテンプレ通り、鍛冶職人は身長140㎝有るか無いかわからない位の小さ……ゴホン、小柄でやけに老k……ゴホンゴホン、貫禄の有る見た目55歳位の多分ドワーフの人だった。多分、が付くのはドワーフの特徴がテンプレ通りかどうかを知らないからだ。後、何でか知らないけど、べらんめぇ口調だし。

それに……何で人の思考が読めるんだよ。初瀬じゃあるまいし。

「声が聞こえんでぇ!!この野郎!!さっきから聞いとれば失礼な事をよぉけぇ喚きおって!!てやんでぃ!!」

マジか。気を付けないと。

「で、何の用でぃ!!この野郎!!買うのならそこら辺のを選んどっけってんでぃ!!」

「あ、いえ。こういう者なんですけど…。」

予め渡されてた紹介状をドワーフの鍛冶職人に渡す。

「……このヴィットリオの坊主が寄越して来た書状の坊主なら、さっさとその事を言っとけてっんでぃ!!この野郎!!さっさとついて来い!」

さっさと鍛冶場に戻って行ったのを慌てて追いかける。

鍛冶場に入ると、───



「うわっ、ちょっ!!」

─────そこには様々な武具が無造作に散らかっていた。

マジで立錐の余地もねぇよ。

「踏んづけたら、只じゃおかねぇけぇな!!この野郎!!」

こういうのを見た事が無いから良くわからんけど、全部業物に見えるよ…。踏むなって言うなら、もっと丁寧に扱えば良いのに。

「で、おめぇが鍛冶をやりてぇって坊主だな?この野郎!!本当だったらおめぇみてぇなへっぽこにゃあ向いてねぇんだが…最近の若いのはどいつもこいつもド派手なもんばっかに目がいってよぉ…やる気が有るんなら、それなりの根性を示せよ!!良いな?この野郎!!」

「は、はいっ!!」

こうして、俺はドワーフ鍛冶師への弟子入り説明会が始まった─────




───筈なのだが、

「もっと腰に力を入れて打たんかい、この野郎!!ほら、ぼさっとしとるけぇこの鉄はまた火にくべ直しじゃこの野郎!!」

「はいっ!!」

「返事をする暇有るならその分作業をせぇこの野郎!!」

俺は今、体感で少なくとも3週間はこの鍛冶場に缶詰めをしている。

いや、させられていると言った方が正しい。

「ほれ、薪をさっさといれんかいこの野郎!!」

説明というか見学で終わりかと思っていたんだけど、まさかそのまま鎚とかを持たされるとは全く考えてもなかったよ。

「はよせんかこの野郎!!」

俺はまだまだ城に帰れそうにないな…。


~千歳の体内時計で更に2週間経過~

「まだまだひよっことしか呼べんがやっとワシが鍛えたと言っても問題ない腕にはなったけぇな。技術も全部教えておる。これより上達したければ、後はひたすら鍛練あるのみじゃ。このことを決して忘れるんじゃねぇぞこの野郎!!」

「はいっ、ありがとうございました!!」

必要最低限の食事と休憩だけで、後は脇目もふらず、否、ふらせてもらえずに鍛冶だけに打ち込み、ようやく免許皆伝っぽいお墨付きを貰えた。

足元がかなり覚束無いけど、ようやく俺は城に帰れるってことで一歩一歩着実に帰っている。


家路、今回は城路とでも言えば良いんだろうか、はただ帰るのも暇だし、今のステータスがどーなってるのか見よっかな。

「ステータスオープン。」


────────────────────


Name: 鬼怒川 千歳

Age: 16歳

Job: 勇者

Level: 1

HP: 105/105

MP: 60/60


AC: 40

MS: 60

AG: 40

OP: 55

DP: 60

CP: 30

称号

「駆け出し勇者」

能力の数値を常人の3倍以上にする。

「下剋上を望みし者」

HPを1.5倍にする。

「主神の娯楽おもちゃ

DPを1.2倍にする。

「元王国筆頭鍛冶師の弟子」

MSを1.5倍にする。


スキル

「二天一流」 熟練度95

かの剣豪・宮本武蔵が開いた流派。

基本的には、左手に小太刀、右手に大太刀を用いる。

「水属性魔術」熟練度8

属性が水である魔術。火属性と対を為し、相性が悪い。

「火属性魔術」熟練度8

属性が火である魔術。水属性と対を為し、相性が悪い。

「治癒術」熟練度8

怪我、病気を治療出来る術。

「鍛冶」熟練度90

剣、槍、盾、鎧、弓等の武具を作る技術。

────────────────────

思ったより鍛冶の熟練度が高かった。まぁ、5週間(体感)もぶっ続けでしてたらそうなるよね。…免許皆伝になるまで上がってるけど。

それよりも、鍛冶ばっかりしていたのに、若しくはお陰でHPとAC、MS、AG、OPがなんか上がってるんだけど、筋肉と体力がついたってことで良いのかね?

ん?MP?鍛冶修行前の治癒術なり魔術訓練なりなんなりだと思うよ?

疲れてはいるんだけど、ステータスが上がってるのがわかって、ちょっとテンションも上がったから、ちょっとはやく帰れそう。


そうこうしてるうちに、お城迄帰った訳だけど、門番の兵士さんを始め、皆に微妙な顔をされるんだけど何でだろう?まぁ良いや。自室に戻ろ。


「ただいま~、お?初瀬じゃん。帰ったよ~」

「え?千歳!?3ヶ月もどこ行ってたのよ?って、臭っ!?超臭っ!?お風呂入って無いの!?」

「あっ!?鍛冶の鍛練がヤバすぎて忘れてた!!」

あの厳しい鍛練の日々やべぇな。風呂の事一切頭ン中に無かったぞ。

「はぁ!?何それ!?そんな事より、まずお風呂入って来なさいよ!!ほら行った行った!!」

急いで風呂行こ。



すれ違う侍女と騎士の皆さん全員に苦笑いをされつつ浴場に行き、入浴を済ませ、部屋に戻って一息つこうと思ったのは良いんだけど…

「こんなに長い間帰って来なかったんだから、陛下に報告位は最低でもしなさいよ。」

と、初瀬に言われ、それもそうだと思い、今将に陛下の執務室へと歩いてる感じ。謁見の間とは別にこーゆーのあるんだね。知らなかったからミレーナさんに案内してもらってるけど。


それにしても5週間位かと思ってたら、まさか倍以上の3ヶ月経ってるとはねぇ…

あ、着いたっぽい。

「失礼します。」

ノックをして、許可をもらってから入室。

「おぉ、千歳よ。久しぶりに見るのぉ。お主が帰って来ぬから、予定が大分狂っておるのじゃが。」

「すみません。バルトロメイ師匠がそのまま住み込み修行に入るとは思ってもいなかったので…。」

「あぁ、バルトロメイの爺さんならやりかねんのぉ。」

件のドワーフ鍛冶職人・バルトロメイ師匠(修行中に質問しようとしたら、「ワシの名前はバルトロメイてのがあるんでぃ!!名前位さっさと聞いとけつってんでぃ、この野郎!!」と言われた)は鍛冶に関しては一切の妥協を許さないから、こっちの事情なんか全く考慮しなかったよ、うん。

ん?この言い方だと昔なんかあったのかね。

「あの、バルトロメイ師匠に昔なんかあったんですか?」

「えっとのぅ…あやつは5年前迄王国筆頭鍛冶師でのぅ。それに加えこの世界で最高峰の技術を持っとるからのぅ。ワシが物心つく前から我が国に仕えておるから今や誰もあやつに逆らえる者がおらんでな。」

我が国の騎士団を始め主たる家臣は皆奴の作を持っとるのぅ。あやつの作を越える魔剣なんぞは滅多に手に入れれる物ではないでな、と続ける陛下。修行初日にはわかんなかったけど、時が過ぎるにつれて段々とわかる様になってきた武具の良し悪し。あそこはマジでヤバい。傑作としか呼べないやつしかない。ある種の魔窟だよ、うん。この国が戦争で敗色濃厚になりつつあるとは言っても、現時点で最大級の国力を誇っているのにも納得だよ。


鍛冶修行の報告の他、今後の予定についての説明を受けた後、

「もう夜も更けてきておるし、今日明日はゆるりと休みを取ると良い。明後日からは続きの修行をして貰うからのぅ。」

という一言で退室を許され、かれこれ3ヶ月にも渡る修行の疲れを取ろうと、ベッドに倒れ込んだのは良いんだけど…。


「あんたがいなかった間の不眠が漸く解消されるわね。」

幼なじみ初瀬の一言のお陰で、鍛冶修行の疲れが完全にとれる日はまだ近くないのを痛感したよ。トホホ…。

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勇者は異世界において、海戦を成せばいい 磐貭徹三 @iwamoto-tetsuzou

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