第6話スコシダケユメヲミル

 この人は何かを見つけたか決心したのか、いづれにしても嘘はついていないのがよくわかるのでそれが


恐ろしい 


 自分は震えが止まらないまま促されて足を進める


 境界を超えると体が元に戻り大きくなった


もう、無垢で無防備な子供ではない 



雪がちらちらと落ちてあっという間に激しくなった 


あの人は反対側に歩いて天に昇っていく


大人になった自分を綺麗だと思ってくれるだろうか


あの人が振り向いた気配がして自分も振り向いた


そうしてその表情を認めた


ほんの少しだけ遠く見つめあってから振り返って歩き出した


 それから自分の顔に微笑が浮かんでくるのを感じた


あの人が一瞬見せた表情、それだけで十分だった 同じ未来を過ごすなんて考えたこともなかったけれど


少しだけ夢をみよう


また会える、少なくとも来年には、一年はすぐすぎるし、その間は幸せでいられるだろう 


雪は、風に乗ってどんどん細かくなり続けたが、しっかりとした足取りで歩いた


 小さな狐家を胸に抱きしめて

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狐家の密会 のはらきつねごぜん @nohara

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