第4話 説教の時間

 初陣を終えて、信夫、葵、草汰の三人は帰路についた。

 玄関を開けて、疲れた体を引きずって、リビングルームになだれ込む。疲労感が半端ない。体育の授業に比べたら、微々たるはずの運動量なのに。

「大家さん。僕の戦いぶり、どうでした?」

 信夫の発言に、草汰は面食らった。一方的にやられていただけなのに。

「あんたたちはダメね」

 辛辣な言葉が飛び出る大家さん。耳が痛いが、その通りだから仕方ない。

「どこら辺がいけなかったのでしょうか。次から直しますから、教えて下さい」

 葵は良い子だ。そして、可愛い。だが、その聞き方はどうだろうか。普通に考えて、分かりそうだが。

「そうね。葵、あんた次回から水着で登場しなさい」

「ハァ?」

「手っ取り早く、お色気で勝負しましょう。これで、オファーが多数来るわね」

「来るわね、じゃないですよ。戦いに水着って、必要性がなくないっすか?」

「次は、信夫」

 草汰の意見は無視された。

「あんたは残念なイケメンを出しなさい」

「え?この天才の僕に残念な箇所なんてありませんよ」

「いや、既に出来上がっているから大丈夫でしょう」

「いかにも、帰国子女らしく中途半端に英語を混ぜなさい。それから、語尾は『だぜ』で統一ね」

「いや、こいつ、プライド高そうだから、無理なんじゃ…」

「おcheapな御用なんだぜ」

 案外、壁は低かった。

「いいわね。じゃあ、最後は草汰ポチ

 草汰は厭な予感がした。

 犬っぽいことをしろとか言われるのか。三回回って吼えろとか?

「あんた、食いしん坊キャラになさい。あ、そうだ。カレー。カレーが大好きって設定にしましょうか。C●C●壱●屋がスポンサーになってくれるかも」

「いやあ、意味わかんねーす」

「houseownerさん。そのideaはrejectだぜ」

「信夫。お前、律儀だな」

 今まで「さん」をつけていたが、いつの間にか敬称はなくなっていた。

「curryと言えば、yellowがそのroleをplayするのがtheoryだぜ。heはgreenだからsuitableではないんだぜ」

「ハッ。盲点だったわ」

「だったら、グリーンカレーが好きということにしたらどうでしょう」

「それは、goodなideaなんだぜ」

「いいわね。それ採用」

 草汰は却下したかったが、愛しの葵の提案なので、無碍にはできなかった。


 そんな折、一人の来訪者があった。


「大佐…もとい、長官。マーシーGの搬送終わりました」

「ご苦労さん」

 男は、戦隊ヒーロー協会の職員で、「搬送屋」と呼ばれていた。戦いが終わった後の怪人を、怪人更正施設なる場所へ送り届ける役目だそうだ。

 人間でいうところの軽犯罪を犯した怪人は、原則として、命は奪わない。塵芥の一つも残さず、爆散してくれればいいが、ご都合主義に世界は出来ていないらしく、死体の始末にも苦慮するのが現実だ。

「長官。準備の方はよろしいのですか?あまり、時間はありませんよ。奴等が本格的に動き出します」

 草汰も葵も信夫も、奴等という言葉に反応した。そこには、不穏な意味が込められているように思えたからだ。

「なるようにしかならないわ。それより、今からこれらを揃えてくれる?」

 何か、武器か戦隊ヒーローらしく、巨大ロボの調達だろうか。大家さんの渡したメモを男は読み上げる。

「鶏肉、ナス、ココナッツミルク、青唐辛子、バジル…」


 これ、グリーンカレーの材料だ!


…Episode2へ続く


CAST

フラワーコマンダー

・?

・?

風間信夫かざましのぶ(ブルーヒアシンス)

蓬田草汰よもぎだそうた(グリーンマグワード)

日向葵ひむかいあおい(イエローサンフラワー)


関係者

・大家さん(長官)

・搬送屋の男


ゲスト怪人

・マーシーG

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百花繚乱フラワーコマンダー hyro @hirosnow

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