第4話
ポン、ポンポン、と音だけの花火が上がる。
今日は町のお祭りで、風車の横のグラウンドに色んな出店が並び、地域の人々で賑わっている。
僕はリサお姉さんを誘って、風車の展望台にやって来ていた。
あの台風の日、溺れかけた僕は居合わせた消防所の人に助けられた。
この風車は川が増水した時に、隣の池に水を引き入れるポンプ施設も兼ねているそうで、その操作に来ていた人が運よく僕を見つけてくれたのだった。
もちろんその後で親にはしこたま怒られたわけだけど、一つ良いことも聞くことができた。
音が鳴り始める。
最初にモーター音。
続いて、みしみし、ギギギ、といいながら、風車の羽根がゆっくりと回り始めた。
この公園でお祭りのある今日、この時間に風車を回す予定。
あの日、風車の中に一時的に保護されながら聞きだした情報だ。
これを見せるためにリサお姉さんを呼び出したのだ。
そのリサお姉さんは、びっくりした顔で青い瞳をまん丸にしている。
「まわった」
「回ったよゆうくん!」
興奮したリサお姉さんは感動をどう表現したらいいか分からずキョロキョロしていたが、最終的に僕をむぎゅっと抱きしめて落ち着いた。さすがにこんな密着するとドキドキしてしまう。
その後で展望台から降り、外側から回っている風車を眺めていたんだけど
「でも落ち着いてみたら回ったからって別に何ともないよね」
という結論になって二人で大爆笑してしまった。
そうしたらリサお姉さんは何かスッキリした顔で自分のことをいろいろ話してくれたんだ。
お姉さんが生まれる前にスペイン人の母親が日本に帰化していて、実は生まれも育ちも戸籍上も日本人だってこと。
メンタルが完全に日本人なのに、見た目が他の人と違うことに不安を感じていたこと。
「でもなんかもうそういうのあんまり気にならなくなったわ。ゆう君のおかげかな?ありがとう。」
そう笑うサラお姉さんの顔は、出会ったときよりも優しい感じで・・・
「じゃあ行こっか、お祭り!デートするんでしょ?」
「・・・うん!」
手を取って駆け出した僕たちの後ろで、風車はゆっくりと回っていた。
回らない風車と青い目の彼女 Enju @Enju_mestr
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます