うきくさの話。(「未言屋」さまより)


芽来めく  :一度は枯れたように見えた草や花が、再び芽ぐむこと。

手杯てつき  :水を掬う時の手の形。 契りの酒を受ける杯のように、なにかを大切に包

     み込むように受けとる手の形。

月行燈つきあんどん :外を歩いている時に、足元を照らすほど明るい月。

季吐ときつく :季節を想わせる草花や天地が、息をこぼすように風を薫らせること。

涼気すずけふる:秋に涼しい空気が降るように、残暑が和らぐ様子。

老い立ち:樹齢を重ねて穏やかで頼もしい雰囲気を纏いつつ、なお生命力に溢れる

     巨木。

幽月かくりつき  :雲がないけれど、湿気が多いためにぼんやりと靄がかり、姿を曖昧に

      する月。

田の白金しろかね:命を支える米を、なによりも尊厳な宝として称えた未言。






ゆうらりと芽来り顔出すうきくさに月が綺麗と宣う君は



満月を掬わんとする色白き手杯の爪のベイビーピンク



いづみより月行燈のめぐみとてきみがすくひしうきくさの名は



秋風が恋するようにときついて くれなゐ色に染めてくもみじ



涼気ふる麦藁帽子積乱雲

 全ては風に攫われていゆく



「さよならもからから笑う老い立ちのような

           コーヒーショップにいるから」




幽月の優しさを知るブルカニロ博士は何も言わずに消えた




秋風は田の白金の声を聞く今年も僕はここで生きてく




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短歌もどき。そのよん。 桜枝 巧 @ouetakumi

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