死の形
豪快な音と共に協会の壁がぶち破られた。破片が当たって何人かの人たちが倒れてる。そしてその向こうから死した目が迫ってた。
「ドラゴ!!」
「おおう!!」
僕たちは逃げ惑う人々達をかき分けて前へと出る。どうにかして倒れてる人たちを運びたいが……迫る死者達を退けさせないとそれもままならない。けど、足元に倒れてる人たちが居たんじゃ、自由に戦うこともできなくて……しかも相手は死者だ。やりづらいったらありゃしない
「私が彼らを保護します。それでしばらくは耐えられるはずです」
「……頼む!」
ピンクスライムの申し出を一瞬考えたけど……選べる状況ではないよな。それにきっと大丈夫。この子は優秀だ。僕なんかよりもよっぼど。スライムが体を分けてのそのそと床に倒れてる人たちを包み込んでいく。僕とドラゴは死者たちの足を狙って剣で切っていく。次々と迫ってくるんだ。一体一体をまともに相手にはしてられない。とりあえず足を壊せば紅軍は阻むことは出来る。とりあえず今はそれで時間を稼ぐしかない。
「ぼれ……も……」
「お前は下がってろブリン!!」
ドラゴは僕たちと同じように戦おうとしてるブリンにそう叫ぶ。確かに今のブリンでは厳しいだろう。今はまだ本調子にはみえないしね。確かにこの数はヤバいが……それでもいまはなんとかなって――
「ルドラ!」
珍しくメルルの奴が叫んだ――僕はその意味を理解して後ろに飛びぬく。その瞬間、大きな衝撃が再び教会を揺らした。そして僕の上に巨影が降りた。
「ぐがあ……ああ……」
「なんだ……これ?」
僕の視界には化け物がいた。いや、大体魔物は化け物だ。けど……だいたいは動物をより凶悪な見た目にしたような奴らが多い。けどこれはまごうことなき化け物だ。近くにいた死者達さえも取り込んでその何かはさらに大きくなる。見た目はスライムっぽい。けど……あのピンクのスライムとは比べ物にならないくらいに禍々しい。体中から飛び出る手足……剥がれ落ちた皮から血と肉が滴り落ちてる体。そして周囲に立ち込める腐った匂い……邪悪、それを本能が訴えかけてくる見た目してる。
そんな圧倒的な見た目に驚いてると、奴の体の一部が僕に向かって飛び出してきた。
「あぶな!?」
そんな感じで避けると後ろにいた槍をもった青年に当たる。どうやら奥の扉の前で守りを固めてた一人のようだ。あたったその人は何かを言ってたが、当たった奴の一部が彼を包みこんで元に戻ってく。引き戻ってくなか、彼と一瞬目が合った。僕は手を伸ばすけど……それは届かなくて……そして彼は次の瞬間、声もなく骨になった。
勝てない勇者の英雄譚 uenouta @i_okai
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