四面楚歌

 ドン! ドン! と教会の正面の扉が激しく揺さぶられてる。避難してた人たちは女神さまの像の傍まで集まっておびえてる。でもそれほど慌ててるって感じではない。するとシスターが出てきてこういった。


「皆さん冷静に。大丈夫です。この場所は神様によって守られてます。彼らもしばらくすると引き下がるでしょう」


 シスターの声は静かに心にしみるような感じだ。皆を安心させることを第一にして声を発してるんだろう。それと多分だけど……こういうことはよくあるんだと思う。だからこそ誰もが落ち着いてる。普通防衛線があの正面の扉だけ……なんてことになれば、もっと不安がっておかしくない。だってあれが破られればもう終わり……なんだから。けどここの人達に慌てた様子がないってことは、本当にあの扉が破られることがないのがわかってるって事。


 何度も何度も外の死者たちはあの扉を破ろうとした――けど結果的にはそれをなすことは出来なかった。だからこそここの人達はまだ健在な訳で……だから必要以上に慌てることはない。そういうことだろう。まあ勿論警戒はしてる。それにあの扉がたたかれる音は正直心臓に悪い。だってどうしてももしも……って思いは自分には拭い去れない。あの大きな扉がたたかれる度に大きく鼓動が唸る。一応あるバリケードに男たちは武器をもって待機してる。


 そして何分たっただろうか……三分? 五分? そんな時間音が続く。するとじわりと扉のつなぎ目や隙間から紫の靄が見えた……


「瘴気……」


 ただ何となく自分はそう呟いた。だけど僕たち以外の人達はそれは衝撃だったみたいだ。特にシスターさんは震えた声を出す。


「そんな……協会に瘴気が入ってくるなんて……そんな事……」


 どうやらあれは今までにない変化らしい。嫌な予感がする。瘴気は少しずつだけどけど確実に教会内部に入ってきてる。


「ど……どいて」


 そう言ってメルルが扉に近づく。その手には瓶に入った聖水がある。扉に近づくとメルルは聖水を扉にかける。その瞬間、扉から染み出てた瘴気が引っ込んだ。そしてそれを見逃さずにメルルは魔法を唱える。足元に煌めく魔法陣。そして扉が光に包まれる。するとさっきまでドンドンと響いてた音がガキンガキンというようななんか金属質なそれになった。見た目は変わってない。ただの木製の扉だ。

 けど明らかに音は金属音のそれに代わってる。魔法で扉を強化した影響だろうか? けどそんな安心もつかの間だった。自分の肩にいるピンクのスライムが言う。


「大きな力が来ます!」

「けど扉はメルルが――」

「そこじゃないです」


 次の瞬間、壁の側面が吹きとぶ。そしてその瓦礫が扉だけを見てたバリケードの傍にいた人たちを襲う。教会内に響き渡る悲鳴。今……神の守りは破られた。

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